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[SIGGRAPH 2014]ゲームからは「The Crew」と「Ryse」が部門賞を受賞。優れた映像作品が集う「Electronic Theater」レポート(前編)
CAFとは,世界中のCG研究者やCGプロダクションスタジオによる作品をプロアマ無関係に平等に審査し,優秀な作品を選出するという映画祭的なイベントだ。
Sony Pictures EntertainmentやIndustrial Light & Magicといった大手映画会社や有名スタジオは,過去1年間に手がけた映画向けCGのメイキングをスタイリッシュにまとめたショートムービーを投稿してくるのが恒例となっている一方,PixarやDisneyのように,ストーリーのある短編映画を投稿する企業もあるなど,投稿される作品はさまざまだ。ゲームのグラフィックスをまとめたものが入選することもあり,ゲーマーにとっても見どころのあるイベントといえる。
そんなCAF入選作のなかでも,選りすぐられた優秀作を上映するイベントが「Electronic Theater」だ。例年,Electronic Theaterでは30作前後が上映されるのだが,今年は32作品が選ばれた。そして,これら32作品の中から,さらにいくつもの部門賞が選ばれて表彰されるという流れになっている。
Electronic Theaterで上映された32作品から,印象深い入選作を選び,前後編に分けて紹介したい。
表示解像度は4096×2160ピクセル。RealD製の「RealD-XL」という3D立体視用のアタッチメントを搭載することで,パッシブタイプの3Dメガネを使った立体視ができるようになっていた。ちなみに,
【Best Game Award】The Crew
Maxime Luere氏ほか,フランス
Ubisoft Entertainmentが開発中のMMOレーシングゲーム「The Crew」。その予告編映像が,Electronic Theaterの「Best Game Award」(ベストゲーム賞)を受賞した。E3 2013で公開されたものなので,見たことがある人もいるだろう。
ガレージを飛び出したChevrolet Camaroが,仲間の車と合流して天下御免の暴走を繰り広げ,警察車両に追われてはどんどん過酷な展開になっていく。しかし,その都度,新パーツが追加されていき,オンロードのレーシング仕様だった車がは,いつの間にかオフロードのラリー仕様になっているという展開だ。ラストシーンでは「他のチーム(The Crew)も,それぞれ暴走行為を働いている」ことをほのめかす演出があり,このゲームのMMOらしさをうまく表現できている。
なお,2013年に作られた映像なので「2014年初頭発売」と出てくるのはご愛敬。現在の発売予定は2014年秋となっている。
実はこの映像,リアルタイムレンダリングではなく,フランスのCGプロダクションスタジオであるUnit Imageが制作した,オフラインレンダリング映像である。
このUnit Imageは,同じUbisoft EntertainmentのWii U専用ゲーム「Zombie U」の予告編でも,2013年のElectronic Theater入選を果たしており,2年連続の入選というわけだ。
Electronic TheaterのBest Game Awardというのは,「ゲームに関連していればオフラインレンダリングでも選考対象になる」というルールであり,ゲームの映像という意味では首を捻りたくなる気もする。しかし,そのあたりを差し引いても,The Crewの予告編映像はゲームの面白さを分かりやすく伝えており,完成度には文句の付けようがない。
THE CREW TRAILER MAKING OF from UNIT IMAGE on Vimeo.
【Best Real-Time Graphics Award】
Ryse: Son of Rome
Christopher Evans氏ほか,ドイツ
Xbox One用アクションゲーム「Ryse: Son of Rome」(以下,Ryse)の映像が,「Best Real-Time Graphics Award」(ベストリアルタイムグラフィックス賞)に選ばれた。8時間に及ぶゲームプレイと110分に達するムービーシーンを同一のクオリティで仕上げたことが評価されたという。
とくに「エネルギー保存の法則」に則った物理ベースレンダリングの採用による,金属や革,布といった素材の質感や,高品位な人肌レンダリングとフェイシャルアニメーションによるキャラクターレンダリングは,PlayStation 3/Xbox 360世代のグラフィックスから,大きなステップアップを遂げたことがよく分かる。
部門賞は逃したものの,Ryseから派生したもう1本の映像作品が,Electronic Theater入選を果たしている。
それは「Ryse: Son of Rome Legend of Damocles」というもので,Ryseの世界感を絵画風アニメーションでまとめたオフラインレンダリングムービー作品だ。制作はポーランドのCGプロダクションスタジオであるPlatige ImageとCrytek Poland支社の共同で行われたそうだ。短い映像ながらもなかなか見応えがある作品なので,メイキング映像と合わせて見てほしい。
【Best Commercial Advertisement Award】
Three, The Pony
Dougal Wilson氏ほか,イギリス
イギリスの片田舎にある崖っぷちの牧草地帯。1頭のシェトランドポニーが突然音楽に合わせて踊り出す。仲間の馬に華麗なステップを見せつけてご機嫌だが,人間にこの才能がバレるのは避けたいところ。そのうちダンスに熱中してしまい,群れを外れて……というコミカルな作品だ。
なんの映像かと思っただろうが,実はこれ,イギリスの通信会社であるThreeのテレビCMとのこと。そのかわいらしい映像は「Three, The Pony」の愛称で親しまれており,数々のテレビCM賞を受賞している。そしてElectronic Theaterでも,「Best Commercial Advertisement Award」を獲得したというわけだ。
制作を担当したのは,数多くのテレビCMのCG映像を手がけている英国の制作会社MPCである。
さて,ダンスを披露するポニーは,言うまでもなくCGなのだが,ポニーの足を拡大した映像では樹脂製の模型に毛を植え込んだ模型を使っているそうだ。また,本物のポニーを撮影した映像も組み合わせられており,実写のポニーとCGのポニーがシームレスに切り替えられている。なお,背景は,実写映像の加工とマットペインティングによる手描きが併用されているとのことだ。
ちなみに,このシリーズにはクリスマスバージョンもあり,完全に同一のシーケンスがクリスマス風の映像に様変わりしている。こんなことができるのもCGならではといったところか。
The Final Straw
Riccardo Renna氏,アメリカ
米国フロリダ州にある芸術デザイン系大学「Ringling College of Art and Design」の学生,Riccardo Renna氏による作品。
ワラ(Straw)でできたカカシが作物の番をしていると,不敵なカラスがやってくる。カカシに気が付いているくせに,作物にちょっかいを出すカラス。とうとう堪忍袋の緒が切れたカカシは武器を持って実力行使に出るのだが,まったく歯が立たない。カカシはカラスに勝つことができるのか……というコメディ作品だ。
「トムとジェリー」的な「力あるものがなぜか勝てない」という,古典的なアメリカン・カートゥーンのノリで展開される本作だが,最後の最後には予想外に「お下品なオチ」が待っている。Electronic Theater上映時には,なぜか女性客の方が大声を上げて笑っていた。ちなみに「The Final Straw」には「最後の一撃」の意味があるそうだ(笑)。
Riccardo Renna氏の公式サイトには,同氏の過去作品も掲載されている。興味のある人は訪問してみてはいかがだろう。
Lune et le Loup
Patrick Delage氏ほか,Dwarf Animation Studio,フランス
フランスのCGアニメーション制作スタジオ,Dwarf Animation Studioの新作短編作品。
赤ちゃんには仲良しの友達がいる。それはいつも遊んでくれる「狼のぬいぐるみ」だ。大人が不在がちのこの家では,狼君が赤ちゃんの世話係なのだ。いつものように,ミルクを温めてベッドへ持っていくと,お腹をすかせた赤ちゃんは,狼の注意も聞かずにミルクを一気に飲んでしまい,ゲップを連発してしまう。ゲップを止めようと狼君はあの手この手の策を講じるが……。
ちなみに,「Lune et le Loup」はフランス語で「月と狼」の意味である。
リアルでありながら,暖かみのある質感と柔らかいライティング。かわいらしいキャラクター描写に加えて,短いながらも愛情溢れるストーリーテリングと,特別な賞を獲得していない作品ではありながら,Electronic Theaterでの上映時には一際大きな拍手を浴びていた。
Feast
Patrick Osborne氏ほか,Walt Disney Animation Studios,アメリカ
拾われてきたワンちゃんは,捨て犬時代にひもじい思いをしてきた経験からか,カロリー高めの肉やチーズ,甘いものといったご馳走が大好き。飼い主と食事の好みが一致するおかげでウマが合い,幸せな毎日をすごしていた。ところが,飼い主が意中の女性とつきあい始めてから,ワンちゃんに出される食事がおかしくなってきた。野菜や果物が多くなり,同棲が始まると大好物だった高カロリーメニューが皆無に。これはヤバい。
しかし,ある日,飼い主が彼女と大げんかをしてしまい,彼女は家を出ていってしまう。翌日からは高カロリーメニューが復活し,ワンちゃんにとっては幸せな食生活が戻ってきたのだが……「でも,本当にこれでよかったのだろうか?」
本作の監督を務めたPatrick Osborne氏は,Electronic Theater上映初日に特別ゲストとして登壇した。「アニメよりゲームが大好き」という人生を送ってきた人物だそうで,先ほども名前を挙げたフロリダのRingling College of Art and Design大学に通って,映像作家になることを決意したのだとか。
最初はソニーピクチャーズに入社し,映画「ポーラー・エクスプレス」の制作に参加している。2008年にはDisneyへと移籍して,映画「ボルト」の制作に携わる。Feastに登場するワンちゃんの造形を見た筆者は,「ボルトの主人公とそっくりだな」と思ったのだが,偶然ではなかったわけだ。
その後,Osborne氏は,映画「塔の上のラプンツェル」の制作にも携わったほか,
Feastも紙ひこうきと同じく,「すれ違う男女の思いを,第三者の不思議な力が結びつける」というコンセプトで描かれており,ベースとなる着想には共通したものがあるようだ。
ちなみに,紙ひこうきは映画「シュガーラッシュ」と同時上映されたので,FeastもDisneyの新作アニメ映画と同時上映される可能性は高い。ここで映像を掲載できないのはとても残念だが,劇場での公開を楽しみにしたい。
Electronic Theater|SIGGRAPH 2014
SIGGRAPH 2014 公式Webサイト
- 関連タイトル:
ザ クルー
- 関連タイトル:
Ryse: Son of Rome
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Ryse (C) 2014 Crytek GmbH. All Rights Reserved. Crytek andCryENGINE are trademarks or registered trademarks ofCrytek GmbH in the EU, the USA and other countries.
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