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2017年の4Gamer的スマートフォン検証はこうなる。2016年を振り返りつつ,2017年のスマートフォン動向を考えてみた
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印刷2017/01/26 00:00

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2017年の4Gamer的スマートフォン検証はこうなる。2016年を振り返りつつ,2017年のスマートフォン動向を考えてみた

筆者のiPhone 7 Plusで動く楓さん。2017年も,この方がいなくては始まらない
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 2016年に筆者が大なり小なりテストした端末は,4Gamerに掲載したものだけでも,スマートフォン20機種,タブレット2機種の計22機種にもなった。そのほとんどがAndroid端末で,iPhoneシリーズは「iPhone 7 Plus」のみ,iPadも私的には触れているのだが,記事として取り上げたことはない。

 ゲーム用端末としての選択を考えた場合,正直なところ,iPhoneシリーズが無難な選択ではある。Androidに比べれば端末の種類数が少ないので,ゲームスタジオ側での動作検証や対応に期待できるからだ。とはいえ,Android版「艦隊これくしょん -艦これ-」(以下,艦これ)を筆頭に,Android版のみというタイトルもあるのが悩ましい。

 そうしたゲーム側の対応非対応はともかく,比較的安価ながら,それなりのスペックと性能を備えたミドルクラス市場向けスマートフォンが多数登場したことで,スマートフォン選びの常識は変わりつつある。それによって,端末の選択肢も増えたのが,2016年だったように思う。

ZenFone 3(型番:ZE520KL)
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 そんなわけで,選択肢が増えたこともあり,筆者による私的スマートフォン・オブ・ジ・イヤー2016は,残念ながら決め切ることができなかった。
 たとえば,印象深いものをぱっと挙げてみるだけでも,価格と性能のバランスならASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「ZenFone 3」(型番:ZE520KL)が優秀だった。ハイエンドSoCを搭載しながら価格も安めという点ではZTEの「AXON 7」,とにかく何でもこなせる端末というのであれば「Xperia XZ」か「iPhone 7 Plus」が候補となるだろう。サウンドという一芸に秀でる点で「isai Beat LGV34」(以下,isai Beat)も捨てがたい……といった具合なのである。
 そういう,群雄割拠だった2016年を(遅ればせながら)振り返りつつ,2017年に注目すべきポイントを考えてみようというのが,本稿のテーマである。

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AXON 7
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Xperia XZ(型番:SO-01J)

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iPhone 7 Plus
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isai Beat


メインのAndroidスマートフォンはAXON 7へ移行


筆者所有のAXON 7。カラーは「クォーツグレイ」。妙にタッチパネルの反応が敏感で,ソフトウェアキーボードを使用するときに苦戦することがある
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 まずは,2016年における筆者のスマートフォン購入歴から振り返りを始めよう。
 2015年に導入した「Blackberry Passport」(関連記事)は,Android端末として運用するとたまらない面倒くささがあり,そこを気に入って愛用していた。しかし,性能的に厳しいのは確かなので,「14nmプロセス技術を用いて製造された高性能プロセッサ搭載端末が欲しいな」と考えて,2016年10月にAXON 7を購入した。実勢価格が5万円台後半〜6万円前後というのは,ハイエンドスマートフォンとしてはお手頃と言っていいだろう。

 AXON 7が搭載するSoC(System-on-a-Chip)は,Qualcommのハイエンド市場向けとして定番の「Snapdragon 820」で,挙動も良好だ。ゲームの動作もおおむね快適なのだが,発熱の影響によってサーマルスロットリングに入るタイミングが早めであるのは気になるところか。

 たとえば,「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(iOS / Android,以下 デレステ)を,室温25℃の環境にて表示モード「3D標準」でプレイした場合,3回連続のプレイが限度で,それを超えると放熱を優先するために,SoCの性能が低く抑えられてしまう。そのため,もっぱら表示モード「2D軽量」でのプレイが中心になっている。
 また,艦これは,プレイ中に描写がもたつく様子が散見され,ブラウザ版や推奨端末での動作に比べるとストレスを感じることが多い。AXON 7でのプレイは,遠征回しが限度といった印象である。
 一方で,「World of Tanks Blitz」(iOS / Android)は,フレームレートが58〜60fpsで安定しており,3D映像の描写もとてもいい。

2016年12月7日に配信されたソフトウェアアップデートで,発見した不具合は解消された。「docomo 純正simカードの互換性問題を修正しました」がそれだ
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 なお,購入直後にSIMを正常に認識できなくなるというソフトウェア面の不具合を発見してしまい,解決までに少々面倒なことを経験した。不具合の起きた端末をZTE Corporation(以下,ZTE)の日本法人であるZTEジャパンに渡して解析してもらい,暫定版ビルドを入れて様子を見るはめになったのだ。最終的に問題を解決したソフトウェアアップデートが出るまでの1か月少々はヤキモキさせられたものだが,現在は快適に使用できている。これから買おうかなと考えている人は安心してほしい。
 そのほかには,ヘッドフォン使用時に筐体内のノイズをよく拾う点がちょっと残念ではある。

 細かな使い勝手の評価や性能はレビュー記事を参照してほしいが,ベンチマークテストのスコアはSnapdragon 820搭載機としては,可もなく不可もなしといったところ。しばらくは,メインのスマートフォンとして活用しつつ,スマートフォンレビューの個人的リファレンスとしても使っていきたいと考えている。


ハードウェアの傾向から見たスマートフォン2016


 というわけで,2016年における4Gamer的スマートフォンのトピックを振り返ってみよう。

Moto Z PlayもSnapdragon 625搭載機だ
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 2015年から2016年前半までは,搭載するSoCで,そのスマートフォンがゲームプレイに向くかどうか決まっていた面があった。「Snapdragon 810」のような困ったちゃんの例外もあったものの,ハイエンドSoCを採用する端末以外は,事実上,選択肢から外れていたわけだ。
 しかしその状況は,2016年後半に大きく変わったと考えている。14nm FinFETプロセスを採用したQualcommのミドルクラスSoC「Snapdragon 625」の登場で,「ゲーム用途ならハイエンドスマートフォンで確定」といった常識が通用しなくなってきたからだ。
 4Gamerで取り上げた製品だと,ZenFone 3と「ZenFone 3 Deluxe」(型番:ZS550KL),Motorola Mobilityの「Moto Z Play」などが,Snapdragon 625を採用している。

 Snapdragon 625のCPU性能そのものは,ミドルクラス相応といったものだ。だがプロセスの微細化により,消費電力あたりの性能が向上したことが,ゲームのプレイフィールにも好影響を与えている。プロセスの微細化によって熱ダレが置きにくくなったようで,デレステの挙動も良好になった。

 なお,デレステにおける熱ダレ対策については,CEDEC 2016でのセッションで説明されたことがある。それによると,対策はおおまかに言って2段階あったそうだ。
 1つめの対策は,品質重視の3D標準とは別に,エフェクトを省略して負荷を軽減した「3D軽量」という3D表示モードを用意したうえで,端末のスペックに応じてどちらを利用するかを分けること。2つめの対策は,ドローコール(DrawCall)を大幅に削減し,CPU負荷を減らしたことだそうだ。
 こうしたゲーム開発側による工夫に,SoCの性能向上が合わさったことによって,2016年前半までのミドルクラスSoCでは困難だった3D表示でのゲームプレイが,Snapdragon 625の世代で一応は可能になったわけである。

 ただ,「一応」と記しているのは,Snapdragon 625でも問題がないわけではないからだ。連続でプレイした場合は,どうしても熱ダレが発生してしまうし,プレイ環境の気温が高ければ,どうしても影響は受ける。小型の端末であるスマートフォンでは,発熱によるサーマルスロットリングを完全に回避するのは難しい。
 防水仕様の端末であれば,水道水で軽く洗って冷やすといった対処法もないわけではないが,あまりお勧めできるようなものではなかろう。デレステを基準に端末を選ぶときは,3回程度まで連続プレイができれば十分と割り切るか,5回以上できることを重視するかいったところが決め手になりそうだ。

 デレステは,SoCのスペック差が,プレイフィールに分かりやすく表れるゲームだったが,艦これや「Pokémon GO」(iOS / Android)ではどうだったろうか。

 まず艦これだが,筆者が2016年6月にAndroid端末8製品で行ったテストによって,プレイの快適さはSoCのスペックと比例しないことが判明した。ハイエンドSoCを搭載する端末でも,映像の動きに滑らかさを欠くことがあるのだ。よって,艦これの快適さを優先する人は,公式のお知らせにある動作確認端末一覧(※2016年6月22日 No.835の投稿)にある推奨端末を選んだほうが,幸せになれる可能性は高い。
 問題なのは,2016年6月以降,肝心の動作確認端末一覧が更新されていないこと。つまり,2016年後半に登場した端末は一覧に載っていない。こればかりは運営側による更新を期待するしかないので,運営さんどうか頑張ってね,というところか。

ZTEのエントリー市場向けスマートフォン「BLADE V7 MAX」。発表会で話を聞いたZTEの説明員によると,「ポケモンハントを3回ほど実行して,動作を確認した程度」のチェックしかしてなかったとのこと。実際,ポケスポットが多い場所では挙動が不安定になりがちで,条件付きでプレイ可能というレベルに留まっていた
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 もう1つのPokémon GOだと,デレステや艦これと比べて取捨選択しやすい。というのも,ミドルクラス以上のSoCを搭載する端末であれば,まずOKだからだ。
 一部,エントリー市場向けスマートフォンでも,「Pokémon GOが動作します」とアピールしている製品はあるのだが,やはりスペック的に厳しいのか,ポケスポットが多い場所やジムバトルに入った時点でフリーズしたりするので,お勧めはしない。

 さて,SoCとプロセスルールの関係で気になるのは,2017年に登場予定のQualcomm製ハイエンドSoCSnapdragon 835」が,新世代の10nm FinFETプロセス技術を採用するという点だ(関連記事)。
 Snapdragon 835を搭載する端末は,2017年前半に登場の予定という話なので,早ければ2017年夏モデル,遅くとも2017年秋冬モデルで,搭載するハイエンドスマートフォンが登場してくると予想できる。実際の性能が気になるところである。

 また,Snapdragon 625の例を考えると,Snapdragon 835と同じ10nm世代のプロセスルールで製造されるミドルクラスSoC――名前は「Snapdragon 63x」といったあたりか?――の登場にも期待が持てそうだ。ゲーム用としてスマートフォンを選ぶときに,ハイエンド端末だけでなくミドルクラスの端末も視野に入るようになる傾向は,さらに強くなるだろう。

ステレオスピーカーを内蔵するLG Electronics製のisai Beat。2016年のスマートフォンの中では,良好なスピーカー品質が印象に残った
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 以上がSoCを中心としたこれまでとこれからの話だが,続いてのトピックとしては,サウンド面を取り上げたい。

 2016年は,前面にステレオスピーカーを搭載した端末の増加が目立った。
 ステレオスピーカーの搭載で先行していたのは,ソニーモバイルコミュニケーションズやHTCである。それが2016年になると,ZTEがAXONシリーズに,AppleもiPhone 7シリーズに搭載するなど,採用事例が拡大したのだ。
 ボディの小さなスマートフォンである以上,ステレオ感をそれほど期待できないのは事実である。それでも,ゲームのサウンドを楽しむという観点では,ステレオスピーカー搭載端末の選択肢が増えたことを歓迎したい。

 モノラルスピーカー搭載端末はまだ多いが,一方で,ヘッドフォン出力の品質を改善したものも増えてきた。さらに,いわゆるハイレゾ音源の再生に対応するのはもちろんのこと,ヘッドフォン用のD/Aコンバータチップ(以下,DAC)を搭載する製品も珍しくないという状況にある。

isai Beatのサウンド機能には,Bang & Olufsenによるカジュアルユーザー向けブランド「B&O PLAY」の名が付けられており,背面には「B&O」のロゴマークもある
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 オーディオ向けの製品や技術を扱うメーカーと,スマートフォンメーカーの協業が増えたことも,サウンド面のトピックであった。
 たとえば,AXON 7は旭化成エレクトロニクス製のDACである「AK4490」を採用するだけでなく,内蔵する通信モジュールのノイズ対策でも同社の協力を得ているという。isai Beatは,ESS Technology製のDACを採用したうえで,オーディオ機器メーカーのBang & Olufsenのエンジニアによるチューニングを加えたことをアピールしていた。また,ASUSの「ZenFone 3 Ultra」は,「DTS Headphone:X」によるバーチャルサラウンド出力が可能といった具合だ。

 余談だが,Galaxyシリーズのスマートフォンを展開するSamsung Electronics(以下,Samsung)は,2016年11月に,オーディオ機器メーカーとして知られるHarman International(以下,Harman)を買収すると発表した。Samsungによると,この買収は,Harmanの持つ自動車関連部品事業が,車載電子機器の分野で重要になるためだそうだが,一般ユーザーからすると,Harmanは,harman/kardonやJBL,AKGといったオーディオブランドを抱える企業としての知名度のほうが高い。今後,Samsung製スマートフォンやスマートフォン用ヘッドセットで,Harman傘下のブランドが持つ技術を採用するということは,十分にあり得るだろう。

Galaxy S7 edgeは,有機ELディスプレイパネルのカバーガラスが湾曲している。液晶パネルでも同じようなカバーガラスを採用する製品が増えつつある
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 3つめのトピックは筐体だ。ミドルクラスのスマートフォンまで,金属製のボディを採用するものが増えたのが,2016年の傾向である。採用される素材はアルミニウム合金が多いのだが,端末の薄型化にあたって十分な堅牢性を確保する,筐体を冷却にも使うといった実用的な目的のほかに,質感のよさも,その決め手の1つになっているようだ。
 また,ボディのデザイン面では,「Galaxy S7 edge」やAXON 7のように,カバーガラスパネルの左右端が湾曲した立体的な形状の「2.5Dパネル」を採用するものが増えてきた。

Xiaomiの「Mi Mix」。6.4インチサイズの液晶パネルを備え,前面における画面占有率は90%を超えるという
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 Androidスマートフォンのデザインは,一時,iPhoneの後追い的なものが市場を席巻していた。だが,2016年の製品からは,デザインの潮流に微妙な変化が見られたように感じている。AXON 7やisai Beatは,その好例だろう。2017年は,遠くからでもデザインで見分けられる端末が,もう少し増えてきそうな気配だ。
 ちなみに,最近では中国の端末メーカーが,端末のビジュアルをよく考えた製品を数多く投入している。日本で正規に販売されるものが少ないのが難点ではあるものの,電波法的な問題がなければ,使ってみたいと考えている人もいるのではないだろうか。たとえばXiaomiの「Mi Mix」は,6.4インチサイズの液晶パネルに三辺狭額縁のボディを組み合わせており,もうステキすぎるビジュアルである。

CEATEC 2016でシャープが参考出展していた「Corner R」(左)。Mi Mixに先を越されたが,画面占有率の高さはビジュアルインパクトが極めて強い。右写真は,CEATEC 2016でLenovoが参考出展していた「Folio」。曲がる有機ELディスプレイパネル「Flexible Display」を使ったものだが,ディスプレイパネルの進化からすると,製品での採用もそう遠くなさそうな印象を受けた
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 絶対数こそ少ないながら,ゲーム向けの独自機能を採用するスマートフォンが登場してきたことも,2016年のトピックに挙げておきたい。
 先鞭をつけたのは,SamsungのGalaxy S7 edgeが搭載する「Game Tools」で,ASUSもZenFone 3シリーズで「Game Genie」という機能を採用してきた。
 細かい機能は両社で異なるが,ゲーム映像の録画や配信機能がメインである点は同じだ。据え置き型ゲーム機やPCゲームにおけるゲーム実況をスマートフォンでも実現したいというニーズに,ゲームを動作させながら映像を録画できる性能をハイエンドSoCが備えたことで,実現したものである。

Galaxy S7 edgeのGame Tools(左)と,ZenFone 3のGame Genie(右)。メインとなる機能はゲームの録画と実況配信だ。ゲーム画面上に扇形のUIを被せるデザインは,後者が前者を真似したのだろう
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 実際に使ってみても,プレイ動画の録画がとても楽にできるので,今後,ゲームに注力するメーカーの間では,採用が広がっていく可能性もあるだろう。


2017年にはスマートフォンのテスト環境も少し変わる


 ここで話を変えて,2017年のスマートフォンで行おうと考えているテストについて述べてみたい。

 これまで,筆者によるスマートフォンの動作検証においては,定番のグラフィックスベンチマークアプリである「3DMark」をメインに,実ゲームでの挙動チェックや,追加のテストを組み合わせる形で行ってきた。
 ベンチマークアプリだけでテストを済ませない理由は,ベンチマークアプリの挙動を検出すると,CPUやGPUの動作クロックを引き上げて性能が高いように見せかける端末が,過去に存在したためだ。それに加えて,ゲームは入力とそのレスポンスが重要であり,そのあたりは実際にプレイしてみないと分からないためでもある。

 まず3DMarkだが,これまで採用してきた「Ice Storm Unlimited」プリセットから,新しい「Sling Shot Unlimited」プリセット(関連記事)に変更する。Ice Storm Unlimitedは2013年に登場したテストで,Snapdragon 820シリーズを搭載した端末ではスコアが3万台に達するなど,今や負荷が低すぎるからだ。負荷の高いSling Shot Unlimitedに移行してもいい頃だろう。

OpenGL ES 3.0に対応するSling Shotテストの一例。PC用3DMarkのDirectX 10世代テストである「Cloud Gate」を基にしたもので,Android端末とiOS端末で,同じテストによる横並びの性能比較が可能だ
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 次にストレージ性能のテストを,「A1 SD Bench」から「PCMark for Android」の「Storage test」に変更する(関連記事)。これは,あるゲーム開発者から「ランダム読み書きの性能に注目すべき」という提案を受けたことが切っ掛けだ。スマートフォンにおけるストレージ性能の重要性については,提案を受けた時期に英語圏でも話題になっていたこともある。

 そこで,いくつかの端末でテストしてみたところ,PCのストレージと同様に,スマートフォンでも逐次(シーケンシャル)読み書き性能だけでなく,ランダム読み書き性能も体感性能に直結すると判断できた。そこで,テスト項目が多く,データの信頼性も期待できるPCMark for Androidを採用することにしたわけだ。

PCMark for AndroidのStorage test。テストのためにダウンロードするデータ量も約21MBと少ないので,時間の制約がある筆者のテストに向いている
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A1 SD Bench。メインメモリの逐次読み書き性能は測れるのだが,ランダム読み書き性能も調べたいのだ……
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 メインメモリに対しても,同様のチェックが行えるといいのだが,筆者のテストに適したアプリを見つけられていない。A1 SD Benchは,メインメモリに対する逐次読み書き性能テストを行えるのだが,逐次だけではメモリの性能テストとして不十分なのだ。せいぜいがエントリークラスのスマートフォン同士のメモリアクセス性能比較に使える程度だろう。
 そういった理由で,ミドルクラス以上のスマートフォンをターゲットとした場合,A1 SD Benchは有意なテストにはならないと考えて,今後は外すことにした。今までありがとう。

開発者向けオプションを使用してのセンサーテストも行いたいのだが,発表会場で許可が出たのは,2016年ではisai Beatだけだった。「Xperia X Performance」が抱えていたようなクリティカルな問題を見つけられない可能性は残る
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 連打応答性のテストに使っている「ぺしぺしIkina」は,2017年も継続して使用する。2016年の端末を振り返ると,10秒間で93〜96回になるように連打して,80以上のスコアを計測できるものが大半だ。ただ,計測開始直後に長い飽和を起こす端末がいくつかあったので,今後もテストは必要であると考えている。
 連打応答性テストの重要性は,2015年頃に比べると低くなっていると感じるのも正直なところ。端末の性能向上だけでなく,タッチパネルのセンサーも処理能力が向上しているからだろう。

 ゲームのテストは,タッチに長押し,ドラッグといった断続的な入力と,継続的な負荷をかけた状態での挙動を短時間で確認できるという利点から,2017年もデレステがメインアプリとなる。テストでのプレイ数は連続で3回。結果が怪しい場合は追加でのプレイも行う。

2017年もお付き合いください
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 デレステは,モデリングデータの改善が頻繁に生じたり,ステージとして教室や草原が加わったりと,ビジュアル面での強化が続いている。そして何より,プレイヤー人口が多いため,テスト結果をお伝えしたときに,ゲーマーが自分の端末と体感性能を比較しやすいというのが大きい。ゲーム性能検証用アプリとして,信頼のおけるタイトルの座は,今後もしばらくは揺らがないだろう。楓さん,お美しいし。
 もちろん,デレステ以上に適したタイトルが登場すれば,そちらへのシフトも,当然,検討する。付け加えるなら,八神マキノは筆者生産地である岐阜出身であり,言動的にソフトピアジャパン周辺育ちの感があるため,2017年はプッシュしていきたい。

 艦これは,テスト時間に余裕があれば行う程度。Pokémon GOは,テスト現場(※大抵は発表会会場)でGPSを受信できないことが多いため,基本は対象外としている。ただ,エントリークラスのスマートフォンにおいては,「最低限のゲーム性能を持つか否か」のテストに使えるので,状況次第で採用するといったところか。
 もう1つ,発表会でのテストは難しそうだが,レビューでのテスト用として,新たに「SimCity BuildIt」を導入することも検討している。このゲームは,ストレージのランダム読み書き性能を確認するのに使えそうな感触を得たので,現在,テストの基準となる都市(ゲーム内で)開発中だ。
 SimCity BuildItは,都市が大規模になると細かいデータの読み出し量が増えるようで,ロード時間が長くなる点を利用できそうだな,と考えている。ただ,他にも箱庭系ゲームをテストに利用することを検討しているので,異なるタイトルになる可能性はあるが。


 なお,言うまでもないことだとは思うが,端末の新製品発表会場では,この中かいくつか,3DMarkとぺしぺしIkina,デレステの優先度を高めにピックアップして,実行することになる。
 すべてのテストができるのが理想なのは明らかであるものの,アプリのインストールも考えると,テストには1台あたり数十分かかる。複数の端末をテストする必要のある発表会場では,どうしても取捨選択せねばならないので,この点はご了承を。


Windows×Qualcommというスマートフォンは登場するか?


 話は変わるが,2017年の少し気になる動きについても記しておこう。
 2016年12月に,QualcommとMicrosoftは,Snapdragon 835上でWindows 10をサポートすることを発表した。これはWindows 8の頃にあった「Windows RT」とはまったく異なり,x86プロセッサ用のWin32アプリケーションが動作するというものだ。これにより,Snapdragon 835を採用して,携帯性やバッテリー駆動時間に優れたWindowsタブレットやノートPCが出てくることが期待されている。

 ここで気になるのは,今ある「Windows 10 Mobile」対応スマートフォンとは別に,Windows 10対応のスマートフォンが登場したりするのかや,そもそもx86用のゲームを実用的な性能で動かせるのか,という2点だろう。
 今のところ,Qualcommがターゲットにしているのは「tablets,notebooks,laptops,and PCs」と発表されており,スマートフォンは含まれていない。先のことは分からないが,とりあえずは,これまでAtomプロセッサを採用していた製品の位置に,Snapdragonが入ってくるといったイメージを想定しておけばいいのではなかろうか。

 ゲームについては,さらに情報が少ない。以下に掲載したMicrosoftのデモビデオには,Windows 10用のWoT Blitzが動作する様子があるのだが,画面を回転させている映像以外はほとんど情報がなく,まともにプレイできるのかはまったく分からないのだ。Windows 10とSnapdragonの組み合わせが,ゲーマーも注目すべきものになるのかどうかは,実機が登場してから判断したい。



成熟期に入ったスマートフォン

2017年はまずSnapdragon 835搭載機に期待


 そろそろまとめに入ろう。
 OS的にもスペック的にも,スマートフォンは成熟期に入っていると言っても過言ではない。劇的な進化が少なくなるのは残念だが,端末の選択肢が広がるという点では,ポジティブな面もある。
 古いOSの端末を勧めるわけではないが,OSのサポートやアップデートを考慮しないなら,2年前のミドルクラス〜ハイエンドSoCでも遊べるゲームタイトルはある。そう考えると,2016年のハイエンドSoC,つまりSnapdragon 820シリーズあたりを搭載する端末であれば,今後2年くらいはゲームをプレイするのに困ることはないと思われる。
 ゲーム側が端末に求めるスペックが,大幅に上がるようなことはないだろうというのもあり,2016年に登場した端末から選ぶのなら,ハイスペックなものを選んでおけば当分困ることはないだろう。

 OSやスペックといった点での違いをアピールしにくくなったことにより,端末にどんな付加価値を持たせるかが,メーカーにとって一層重要になったのが2016年だったとも言える。その分かりやすい例が,サウンド機能の強化であった。ただ,それもすでに横並びとまでは言わないが,珍しいものではなくなりつつあるのが現状だ。
 そんな状況を踏まえて,2017年は各社がどこに付加価値を持たせるのか。映像処理の強化に行くのか,それともデザインや形状の個性をアピールする方向に行くのか,あるいは,それら以外の独自機能を詰め込む方向に向かうのかは,今はまだ分からない。GoogleがPixelシリーズの発表時に示したような(関連記事),自社,もしくはパートナーのクラウド技術と絡めて,独自の機能を提供し,それを差別化要素という可能性もあるだろう。

 いずれにしても,Snapdragon 835を搭載する端末がまずは楽しみであり,製品の登場を正座待機で待ちたい。

CES 2017でQualcommが披露していたSnapdragon 835搭載のデモ端末。複雑な3Dグラフィックスを駆使したゲームも,快適に動かせるようになりそうだ
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