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【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!?
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印刷2015/10/22 00:00

連載

【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!?

島国大和 / 不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者

画像集 No.002のサムネイル画像 / 【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!?

島国大和のド畜生 出張所

ブログ:http://dochikushow.blog3.fc2.com/


 皆さんデスマーチしてますか!(挨拶)
 お久しぶりの島国大和でございます。

 最近仕事がパンパンなんですが,ここだけの話,自宅作業のウラで延々と「聖闘士星矢」を視聴しておりました。これがもー,キャラが立ってる立ってる。キャラ作りのお手本のような素晴らしい出来で。
 それもありまして,ちょいとゲームにおける「キャラ立て」なんぞを考えてみたいと思います。


キャラを立てるとは何か


 漫画やゲーム,映像作品。こういったものの登場人物をキャラと呼びます。ドラえもん,サザエさん,ガンダムのアムロ……みたいな人たちですね。

 キャラはキャラクター(character:特徴,性質)の略ですが,日本でこの言葉が物語の登場人物を指すようになったのは,ディズニー映画の契約書にあった「fanciful character」が源流なんだとか。詳細は不明ですが,1950年頃の事だそうです。

 そしてこの「キャラ」が「スジが通っていて物語を牽引する」「人気がある」「興味を引く」といった状態を,“キャラが立つ”と表現します。
 このあたりはいろいろな解釈がありますし,最初に誰が言い出したかも分かりませんが,そこはそれ。

 漫画原作者である小池一夫大先生の「漫画はキャラが立ってなンぼ」というスタンスはとても有名です。
 たとえば,氏の代表作の1つ,「クライング フリーマン」の主人公であるフリーマンは「容姿端麗,優しい眼差しを持ちながら,全身に龍の刺青を持つマッチョ。天性の体術を駆使する百戦練磨の殺し屋だが,望まぬ殺し故に,ターゲットを殺害した後涙を流す。そして百八竜というチャイニーズマフィアの頂点に立つ」という,読み手の興味を引く要素をこれでもかッ! とてんこ盛りにした人物です。

 それだけの情報があるので,フリーマンがいるだけで,彼を狙う敵や,彼を愛する女性,組織の軋轢と,物語がごろんごろん転がっていきます。うまい!
 むしろ開始数巻で,彼の組織が所有する潜水艦からミサイルが発射されるぐらいまで行ってしまい,その後も分けの分からぬところまで一気に転がっていく始末です。

 また,「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる漫画家の荒木飛呂彦先生は,登場人物のキャラクター設定をそれはもう細かく作るのだそうです。家族構成,性格,得意なもの,苦手なもの,影響を受けたものなど,キャラクターの“履歴書”を作り,人物像をコッテリ考え抜いてから漫画に出すので,本当に存在するかような印象を読者に与えられるのだとか。集英社新書「荒木飛呂彦の漫画術」で読みました。
 ほんとに!? 間田敏和とか肝っ玉の玉美とか,登場時と後半ではもはや別人だけど!? なんか都合よく忘れるスキル発動してる!? ……とか野暮は言わない約束です。

 それはともかく,「ジョジョの奇妙な冒険」では,独特の台詞回しや「こういうことをしゃべるのかこの人は」といううまさがあちこちから溶け出していて,その見事さには感心しきりです。こういうのを“キャラを立てる”というのだなー。ちょっとピーキー過ぎる気もしますが。


ゲームにおける“キャラ立て”の歴史


 コンピュータゲームの話をすると,とりあえず「Pong」(1972年)からになりますが,Pongに登場するのはボールとパドルだけですね。スポーツのゲーム化なので,キャラを立てるとかとは無縁です。

 これが「Breakout」(1976年。日本で言うブロック崩し)になると,囚人がカベを壊すという物語が一応あります。知ってました?

「スペースインベーダー」
画像集 No.006のサムネイル画像 / 【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!?
 そして「スペースインベーダー」(1978年)には,宇宙からの侵略者を迎え撃て,という物語があり,グラフィカルに表示された侵略者,インベーダーというキャラクターが確固として存在します。
 インベーダーはキャラクターグッズも作られました(インベーダーキャップ欲しかったなー)。ゲームでキャラが立つようになったのはこの辺りからじゃないかなと思います。

 余談ですが,スペースインベーダーは当初「スペースモンスター」というタイトルだったらしく,発売2か月前くらいに海外販売を視野に入れて改題されたそうです。このあたりも深く掘り下げて考えると面白そうです。

 この後,インベーダーの砲台は,各種宇宙船に姿を変え,パックマンやレーシングカーが現れ,そしてドンキーコングに“ミスタービデオゲーム”のマリオと,見た目,性格,背景があるキャラが登場してくるようになります。このあたりからのゲームキャラクターの歴史は,皆さんもご存知の通りですね。

 ちなみに,最近「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」をプレイしていますが。「伝説の傭兵,最強の潜入者。国家を敵に回し,ダンボールを被ってやり過ごす」というのは見事なキャラ立てですねー。

 RPGやアドベンチャーゲームなどは,お話を楽しむゲームという側面も強いので,キャラクターは重要です。日本のゲームはお話と切っても切り離せないですし,お話イコールキャラでもあります。


ゲームにおけるキャラ立ての重要性


 ぶっちゃけると,ほとんどの商用創作物は,キャラクターを売っています。ウルトラマン,ドラえもん,ガンダム,アイドルマスター,キン肉マン,パズドラ……。

 お金が払いやすいんですよ。キャラクターに対しては。

 逆に,キャラ無しで商売を成功させるのは,ものすごく難しいです。「テトリス」とか,「Threes!」(スリーズ)みたいなのは奇跡の一撃でしょ(キャラあると言えばありますが)。

「Threes!」
画像集 No.004のサムネイル画像 / 【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!? 画像集 No.005のサムネイル画像 / 【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!?

 ここからは裏付けの無い話になってしまいますが,人間はその進化の過程において,事象をシミュレートする能力を獲得しました。
 天候を,危険を,この先どうなるのかを想像する力。これが人間とほかの動物を大きく隔てる能力です。
 そして,複雑な社会構造の中でそのシミュレート能力を使うということは「感情移入する」ことでもあります。こんな事をしたら,彼はどう思うだろう。彼女は何を考えてあんな事をしたのだろう。
 常にそういう推測を重ねながら,人間は生きています。

 社会性の動物である人間が生活するには「他人の感情を推測する力」が必須なので,全ての人がそれなりにその力を持っていて,意図せず使っています。人間の脳って,コミュニケーションの必要性から発達したわけですしね。

 だから,そこにキャラがいれば,どういうキャラか考えてしまう。情報の断片から,そのキャラを好きになったり,キライになったりする。「制服」「メガネ」「パッツン」みたいな記号から,人となりが想起されてしまう。「マッチョ」「ヒゲ」「半裸サスペンダー」みたいな記号から,物語を想像してしまう。

 だから,「キャラ」のようなものは,根源的に強いんじゃないかなと思います。

 魅力的なキャラ絵があればそれだけで,強いアピールになります。そのキャラのバックボーンが興味を引くものであれば,さらに強い芯になります。
 それらがちょっとした断片から溢れ出すようになっていれば,つまりキャラが立っていれば,もう勝ったようなものなんでしょうね。ああ。簡単に勝てるようになりたい。

 「アイドルマスター」とか,「ラブライブ!」のソーシャルゲームは爆発的な売り上げを誇っていますが,ああいったキャラクターを全てベンゼン誘導体に変えたら,どれぐらい売れるか。ガチャを回したくなるか。そういうのを考えてみると楽しいですよね(なんといいサンプルケース! 素晴らしい)。

 「Fate/Grand Order」は,配信開始時にバグが多くて,酷い酷いと言われていたにもかかわらず,あっという間に売り上げランキングを駆け上りましたが,コレがFateじゃなくて,「魚介類/Grand Order」とかだったらさっぱりだったと思います。

 そりゃキャラ重要だわ。と。

 自分は以前「最強のソシャゲはスパロボのような,版権のカタマリではないか」みたいな事を書いた記憶がありますが,これも「版権≒キャラクター」的な発言です。
 人の思い入れを受け止める,誘引する,そういったキャラクターはとにかく強い。

 武器ガチャとキャラクターガチャなら後者のほうを回したい,当たった時にうれしい,みたいなことは,売り上げ見てると良く分かります。

 それはもう,人間の習性だと思います。


キャラとゲームの密接な関係


 ファミコンやMSXの時代だと,版権物のゲームでも,ゲームとキャラが全く合っていないものがありました。
 野球漫画「タッチ」のアクションゲームとか。アムロが降りしきる鉄骨を避けながらガンダムに乗り込むゲームだとか。
 おおらかな時代だったなと思います。

 しかしそれから数年経つと,ゲームとキャラの関係が密接になります。
 例えば「ストリートファイターII」
 春麗はお団子頭にぶっとい脚の中国人女性ですが,一目で中国拳法足技使いと分かるルックス,戦いの舞台(中国の路上,店先で鶏を絞めてる)などから,多くのバックボーンを想像でき,プロフィールやゲームのエンディングから,父の仇を追うインターポールの麻薬捜査官であることが分かります。
 同じようにリュウケンは空手家ですが,かたやストイックに修行に打ち込み,かたや派手な感じでブイブイ言わせている,というのが伝わってきます。

 ゲームの世界をキャラクターが補強し,その操作,手触り,フィードバックにまでキャラクターが影響を与えています。ザンギエフのパンチは痛そう。ブランカは野生っぽい,みたいなの。

 そんなキャラクター性をストIIからごっそり抜くとどうなるか,というのが下の画像です。

画像集 No.001のサムネイル画像 / 【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!?

 右は当たり判定と必要情報だけにしてみた画像です。(本物の当たり判定はおそらくこれより粗く取っていると思いますが)。
 コレはコレでゲームとして成立していて,コンボやキャンセルといった要素もちゃんと入っているので,やりこめば面白い“はず”ですが,これに100円入れて遊ぶのには勇気が要りますよね。

 しかし,ここにグラフィックスやサウンド,バックグラウンドが加わるとキャラが立ち,ヒキの強さが生まれます。100円入れてみたいと思えるようになる。

 格闘ゲーム流行の要因は,その斬新なゲーム性や,対戦による高インカム(短時間でたくさん稼げる)など,いろいろとありますが,この「キャラクターをかぶせたことによって裾野が広がった」というのも大きいのではないでしょうか。
 格闘ゲームプレイヤーではないけれど「このキャラクターが好き」という人によって,市場が広がりました。

 カードゲームなどもそうですね。
 「ガンダムウォー」というカードゲームシリーズがあります。その名の通り,ガンダムのMSやキャラのカードを駆使して戦うわけですが。

リュウ・ホセイ
このカードが破壊されている場合、このカードと同じエリアにいるユニット1枚を破壊する。

カテジナ・ルース
このカードと交戦中の、「男性」と「子供」を持つ敵軍キャラクター1枚を破壊する。

 分かりますかね。
 リュウ・ホセイの効果は,彼が劇中で見せたカミカゼ特攻をゲーム上で再現するものです。カテジナも,ああ,うん。あの人は男性と子供を破壊するわ。と,アニメを見た人なら納得のアレなんです。
 そういうキャラクターがあるからこそ,ガンダムのゲームとして遊べるわけですね。ガンダムの絵が描かれたトランプで神経衰弱しているのとはワケが違います。

 数字遊びのようなゲームでも,強いキャラクターを得ると,一段上に進んで,“心の遊び”になります。それは,人間がキャラクターに心を惹かれてしまう生き物だからです。

 一時,ツンデレが流行りましたが。
 あれなんてのは,「ツンツンしてるキャラがやがてデレる」という“物語”を,キャラの記号に落とし込んで内包させるという,非常にコストパフォーマンスの高いキャラ造型ですよね。物語の基礎構造である「不穏→解決」がキャラの中に納まっている

 ゲームにおいても,キャラクターというのはそうやって,想起させるにも説明するにも,感情移入させるにも,オールマイティに使えるわけです。
 ただし,もちろん魅力的でなければいけない。

 魅力的なキャラさえ創造できれば数年は食いっぱぐれないし,ヘタすりゃ死ぬまで食える!
 ぜぇぜぇ(ぐるぐる目)。


まとめ


画像集 No.007のサムネイル画像 / 【島国大和】立った立った,ゲームキャラが立った!?
 ゲームにおけるキャラは重要ですねー。という話を書きました。
 中盤ものすごく強引でしたけど、細かい事は気にしてはいけません。
 繰り返しになりますが,キャラクターはもっともお金を払いやすいコンテンツなんですよ。ソシャゲとかのガチャで武器が売れないなら,もう擬人化して人間の絵をつけちゃえ,で売り上げアップが実現しちゃうっていう。

 それは人間がもともと,キャラ的なものに引かれるように進化してきたからじゃないかなと思うわけです。
 このあたりいろいろな考え方があると思うので,これが唯一の正解だとは思っていませんが,大事な事には変わりないので,みなで深堀りしていくといいんじゃないかなと。

 そんなわけで今回は,青銅聖闘士と黄金聖闘士のキャラがハンパ無くたっていて,こりゃ30年たっても「聖闘士星矢」の新作が出るわけだわ,と思ったところからのお話でした。

 いや,もーあやかりたい。

 それではこの辺で!
 また何かありましたらお会いしましょう!

■■島国大和■■
有名ゲーム系Blog「島国大和のド畜生」の管理人で,不景気の波にもがく,正体はそっとしておいてほしいゲーム開発者。若かりしころは,「聖闘士星矢」の原作者である車田正美氏の作品が「毎週同じことをやっている」ようにしか見えなかったという島国氏。その面白さに気づいた今では,当時の作品を読み直そうかとも思っているそうです。そういう“今読むと面白い”ものって結構ありそうですよね。
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