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[CEDEC 2021]XR謎解きエンターテインメント「code name:WIZARD」はどのように作られたのか
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印刷2021/08/28 15:07

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[CEDEC 2021]XR謎解きエンターテインメント「code name:WIZARD」はどのように作られたのか

 CEDEC 2021の3日目となる2021年8月26日,カクシンは「現実世界でプレイヤーに映画のような魔法体験を。 世界初!XR謎解きエンターテインメント『code name:WIZARD』の挑戦」という講演を行った。世界初のXR謎解きを謳う「code name:WIZARD」の開発・設計手法が紹介された講演の模様をレポートしよう。

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クリエイティブプロデューサーの池田奈美氏,クリエイティブディレクターの佐々木淳一氏,インタラクティブエンジニアの石黒晴也氏
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「code name:WIZARD」公式サイト

「CEDEC 2021」公式サイト


 最初に,XRとは何かを確認しておくと,VR(仮想現実)やAR(拡張現実),MR(複合現実)など,現実世界と仮想世界を融合させる技術を総称した言葉だ。今回のセッションは,主に現実世界を舞台としたMRが中心となる。
 MRの国内活用は,今のところエンタープライズ(法人)が主であり,コンシューマ(一般消費者)向けの娯楽体験は少ない。ウェアラブルヘッドセットを開発するMagic Leapは,ビジネス戦略ついて,エンタープライズ指向であると発言しているが,デバイス流通を考えれば順当であろうと池田氏は理解を示す。
 しかし,MRと体験型リアルエンターテインメントの親和性は,非常に高いというのが池田氏の見解だ。
 ARに関してはスマートフォンを使ったエンターテインメントが次第にビジネス化しており,具体例を挙げると,「かいじゅうのすみか」「ガラパゴスの微振動」「PSYCHO-PASS 渋谷サイコハザード」などがある。

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 カクシンが手掛けるcode name:WIZARDは,デジタル技術によって拡張された現実世界を舞台に,没入感の高い「プレイヤー自身が主人公の体験型エンターテインメント」として展開されている。その体験設計や開発,ビジネスなど,どれを取っても大変なチャレンジだったという。

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 code name:WIZARDは,謎の企業から依頼を受けたプレイヤーが,魔法使い「ストライダー」の修練生として,さまざまな試練に挑むというもの。謎の企業が発明した「マジックサーチャー」(MRデバイスの「Magic Leap 1」)を装着することで,プレイヤーの手から魔法を放てるようになる。
 コンセプトは「五感+第六感(心)で感じる,XR魔法体験」で,これまで,物語の序章に当たる「Episode 0」と,プロジェクトの本格稼働後に作られた「Episode 1」が登場している。

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 Episode 0はクラウドファンディングで資金を募り,2020年8月から9月にかけて体験会が実施された。場所はカクシン社内で,プレイ人数は2人,体験時間は20分ほどで,ジャンルはXR探索アトラクションとなる。プレイヤー達は,本棚や怪しい道具が設置された「魔法の部屋」に入り,本から逃げ出した妖精たちを捕まえる。
 部屋の中は自由に動けるので,いわば,フリーローム型XRが体験できるのだ。4Gamerでは2020年7月22日に体験レポートを掲載しているので,詳しくはそちらを確認してほしい。

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 近年,ARやVRといった技術が発展し,それらを使用したゲームやアトラクションが増加しつつある。今回,筆者はそんな最新技術のひとつ「MR」を使用した探索アトラクション「code name: WIZARD」の世界を体験する機会を得た。本稿では,本作の魅力を紹介するとともに,その体験の様子をレポートしていく。

[2020/07/22 15:27]

 佐々木氏によれば,MRの演出を現実世界での事象と錯覚させるため,さまざまな工夫をこらした。中でも大きなポイントが,現実のアイテムや施設にCGを重ね,「実物を触ることでMRを変化させる演出」を取り入れたことだという。Magic Leap 1とプロジェクターを組み合わせ,光る本に触れるとエフェクトが発生したり,ガタガタと震える扉を開けると,中に隠れていた妖精が飛び出してきたりといった具合だ。

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 また,魔法の世界でMagic Leap 1という機械を装着しなければならないというイメージの乖離に対しては,世界観にスチームパンク的な要素を取り入れ,デバイスを物語に組み込むといった手法が取られた。

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 没入感を高めるためにコントローラの使用は止め,ハンドジェスチャーによる操作が採用された。ここでは,指輪を装着して手をかざすと魔法が発動する仕組みにすることで,意識せずにハンドジェスチャーを使わせることに成功したという。また,扉を開ける,本を開くといった一般動作がハンドジェスチャーからシームレスに行えるため,一般動作とハンドジェスチャーの境界が曖昧になり,さらに没入感が高まった。

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 プレイヤーの感情を高めるために,デバイス装着前から物語を始める試みも行われた。体験エリア前でプロのアクターによるプレショーを行い,世界観を知ってもらう。同時に,プレショーに組み込む形でデバイスの制約や仕様説明を行うことで,プレイヤーの満足度が大きく向上したという。

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 最初の試みであるEpisode 0では,当然ながらさまざまな課題も見えた。例えば,本のエフェクトに触れることでストーリーが始まるのに,視野角の問題や部屋の様子に気を取られて,そのことになかなか気づいてもらえない。だからといって,デバイスの特性上,明るさは一定に保たなければいけないので,スポットライトを当てて目立たせることもできない。できれば,何も言わなくても,プレイヤーに本に向かってもらいたい……。
 そこで,本へのプロジェクションや,本にモーターを仕込んでの振動,一定距離に近づくとMRでエフェクトを発生させるなど,さまざまなアプローチで解決したそうだ。

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 ビジネスの観点から言えば,Episode 0には回転率やコストの問題があった。1つの公演が終わるたびに,実物のオブジェクトと3Dオブジェクトがズレてしまうので,毎回の位置合わせが必須。部屋を動き回るので,参加人数も絞られ,プレショーを行うため進行に時間もかかる。デバイスを装着する以上,年齢制限も必要だ。

 こうした結果を踏まえて,Episode 1は2020年10月にサービスインした。場所は東京タワーで,現在も開催中だ。プレイ人数は1人からで,体験時間は60〜90分,プレイ料金は3000円で,ジャンルは「XR謎解き」となっている。
 物語は6章だてで,プレイヤーは魔法使いの修練生として,妖精の召喚や試練に挑む。周遊型の謎解きによる召喚魔方陣の生成,MRによる魔法を使った謎解き体験などを盛り込み,体験型の謎解きファンへの訴求も狙った。

Episode 1では,魔法体験だけでなく魔法使いになるまでの試練を導入し,現実世界から徐々に魔法の世界に入り込んでいく。LINEを用いて別世界にいるオペレーターとつながり,物語の補完情報やヒントの提供が受けられる
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開発スケジュール。1章で体験は完結しつつ,最後の章で全体の物語の区切りがつくようになっており,リピートを促進している
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 Episode 0で分かった,1公演が終わるたびに物理的なセッティングをし直さなければならない点は,最も悩んだ課題だったという。解決策として,オブジェクトとの位置合わせを,召喚の儀式という形でプレイヤーに委ねる形とした。プレイヤーがタペストリーの紋章に向かってハンドアクションを行うことで基準点が設定され,そこからオブジェクトの位置などが決められるため,位置合わせが不要になる。いろいろ試したが,この方法はロケーションベースのMRにおける,現状の最適解ではないかと佐々木氏は話した。
 再セッティングが不要になったことから,回転率も向上。会場の面積も拡大でき,ソーシャルディスタンスを確保しながら,最大9名が参加できるようになったという。ただ,「実物に触る」という行為をハンドサインに置き換えたため,体感的な面白さは低下したかもしれないという。

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魔法をテーマにしたファンタジー作品なので,対象年齢以下の子供や家族連れもプレイを望んだ。そこで,タブレット版を導入したという
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 MRでのUX(ユーザー体験)やUIの設計についても触れられた。UXを設計をするにあたり,さまざまなハードルが存在する。デバイスに対する理解,対象物がどこにあるか把握する空間認識,複数あるハンドアクションへの理解,同行者とのコミュニケーション(会話していると重要な説明を逃す)などだ。これらを乗り越えないと,プレイヤーは物語のミッションを実行してくれない。
 佐々木氏によれば,MRデバイスならではのこうしたハードルをプレイヤーにどう乗り越えてもらうかは,体験の中身と同等か,あるいはそれ以上に考えさせられたという。

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 では,ハードルを越えてもらうにはどうすればいいのか。
 Episode 1では,最適なUIデザインとして,新しいものを馴染みのあるものに似せることで理解を促進する「スキューモーフィズム」を採用している。例えば,プレイヤーに指示を読んでもらいたい場合,MRで本を表示するといった感じだ。文字の可視性には欠けるが,直感的で,どうすればいいのか分かりやすいという。
 スキューモーフィズムだけではカバーしきれない部分は,キャラクターによる視線誘導や,ジェスチャー,音声誘導などを用いている。

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事前学習が不十分なままミッションに挑むと,スタッフが口頭でカバーしなければならなくなり,進捗が悪くなる。そのため,情報を与えるヒント機能を追加したり,エフェクトやアニメーションでの視線誘導強化を行ったりした結果,スタッフのサポートが減り,クリア率が上がった
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視線誘導強化の一例。プレイヤーの周囲を回る対象物は,プレイヤーがよそ見をすると見失う。そこで,周囲を回るのではなく,画面の端に映る妖精を視線で正面にとらえようとすると,対象に追いつくようにした。矢印などで誘導しなくても,プレイヤーは自然に妖精を追いかけるようになる
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 佐々木氏からは,今後,Episode 0のような現実体験とMR体験の関係をさらに濃密にしたものを作りたいという展望も語られた。また,マルチプレイでお互いの姿を見て会話しながら進めることがが楽しいので,この2点が実現できれば,より良い体験になるだろうと話した。


 続いてメインエンジニアの石黒氏から,code name:WIZARDにおける「無意識で使えて,しかも楽しい」魔法がどのように開発されたかが紹介された。
 本作の魔法は,本当に魔法を使っているような感覚になれるよう,上記のようにコントローラを使わないが重視されている。コントローラを使ったほうが開発は楽だが,自分の手から意のままに魔法が使えると感じさせる体験の実現に挑戦しているのだ。

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 例えば「手のひらをかざすと,どんなものでも引き寄せる魔法」を考えてみよう。対象に向かって手を伸ばすたとき,どのような線が描かれるだろうか。エンジニアリング的に言えば,手からどのような線を計算して導けば,対象に当てられるかということだ。

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 この疑問に対する1つの解が,ジェスチャーを使った入力機器を開発・販売するLeap Motionのブログに掲載されていたという。そこには,遠くにあるキューブを呼び寄せてつかんだり,それを投げてまた呼び戻したりといった画像が公開されており,ブログの一文には,単に手のひらからレイ(光)を飛ばすのではなく,おおよその肩の位置を推測し,肩から手のひらを通るようなレイを使うという記載があったという。
 石黒氏は,これを参考にプロトタイプの作成を始めた。

 当初は,手から出るビームでオブジェクトを選択し,人差し指と親指でつまむような「OK」の動作をすると,魔法が発動するというものだった。しかし,これを社内で10人以上に体験してもらったところ,うまくいかなかったという。操作が分かりづらく,誰も魔法を使ってくれなかったのだ。

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 説明がなくても分かるように,今度は常にパーティクルを使った魔法に変えてみた。手のひらから常にキラキラしたものが出ており,これを対象に当てると,対象が光り始める。そのまま1秒ほど当て続けると魔法が発動し,手をズラせばキャンセルされるいう仕組みだ。しかし,こちらは,操作が煩わしく,結局誰も使ってくれなかったという。

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 つまり,思ったとおりの対象物に魔法を飛ばせないとストレスになり,また,直観的に使えないと,煩わしく感じるというというわけだ。

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 石黒氏は,この2つを解決する方法を,スマートフォンを触っていて思いついたという。それは,これまでの魔法は「魔法を当てる対象の選択」と「魔法の実行」を分けていたが,これを同時に行えばいいのではないかというものだ。スマートフォンの画面でアプリを立ち上げるとき,選択するという操作はすでに頭の中で終わっており,開きたいと思ったアプリをタップするだけだ。

 これを魔法に置き換えて,手を開いた瞬間にレイを飛ばし,計算で選択されたオブジェクトに対して魔法を発動させるという仕組みになった。ここでようやく,石黒氏も魔法を使っているという実感を得られたそうだ。

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 この魔法の具体的な実装方法も説明された。流れとしては,
1.オブジェクト選択用のベクトルを計算する
2.魔法がオブジェクトに当たるか否か,およびどのオブジェクトを選択するかを計算する
3.目標の場所に向かって適切な魔法を飛ばす
である。

 1については,上記のブログと同様に,「頭からおおよその肩の位置を推測して,その肩から手のひらを通る線」を求める。具体的には,Magic Leap 1から下に15cm,それぞれ左右に7.5cmの位置だ。肩幅に比べて小さめだが,これは魔法を使うときに腕を前に出すため,肩が開き切らないからだ。

 2については,最初は手から出る選択用のベクトルの方向にレイを飛ばし,そのレイに当たったオブジェクトを選択するという方法だった。しかし,これは問題が発生した。
 1つは,オブジェクトが重なったときに,奥のオブジェクトに当てにくくなるというもの。コリジョン(衝突)判定用に,見えない「コライダー」を設定するのだが,これが小さいと当てにくい。そのためオブジェクトより大きくすると,今度はオブジェクトが重なっている場合,奥を狙っても手前のオブジェクトに当たってしまうのだ。

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 もう1つの問題は,オブジェクトとの距離が遠くなると,魔法を当てることのできる範囲が非常に小さくなるというものだ。プレイヤーは体験中に動き回るため,狙いたいオブジェクトが遠くになることは十分に考えられる。
 このほか,コライダーの内側で魔法を放ったときも処理が厄介だ。

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 そこで石黒氏は,魔法が当たるオブジェクトを選択する方法に,コライダーではなく「内積」を用いることにした。オブジェクトが重なっていても,狙いが正確なら内積の大きな奥のオブジェクトに魔法が当てられる。距離が遠い場合でも,内積をもとに魔法を飛ばせば有効範囲が狭くなることはない。

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 ようやく思ったとおりの場所に魔法を飛ばせるようになったので,残りは3の,どのように魔法を飛ばすかだ。プレイヤーが楽しく魔法を使うには,意のままに操っている感じが重要になる。そのため本作では,ベジェ曲線を用いている。
 上記のように,本作では魔法の選択と実行を同時に行っているため,魔法が放たれた瞬間にどのオブジェクトに当たるかは,すでに分かっている。つまり,放たれた時点で,ベジェ曲線に必要な始点(手のひら)と終点(オブジェクト)は決まっているということだ。あとは制御点を求めれば,ベジェ曲線に乗って魔法がカーブを描いて飛んでいく。
 制御点は,始点から終点の距離の3/4だけ進ませた点としている。魔法が放たれてから,後半にグイっと曲がるほうが,物理的に自然に見えるという。

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 この「曲がる魔法」の利点は,プレイヤーが狙った方向と実際に飛んだ方向が認識しやすくなり,魔法の放ち方の学習の補助効果が期待できることにある。
 また,曲がることで動きに幅ができ,単調になりにくく,直線に飛んでいくよりも生き生きと感じられる。魔法がオブジェクトに当たらなかった場合,放たれた瞬間の手の動きの早さに応じてベジェ曲線が描かれるようになっており,これもパターンの幅広さに寄与している。魔法のねじれ具合やエフェクトのゆらめきにもランダム性を持たせた。
 手からただまっすぐ魔法が飛ぶのと,使うたびに見た目の違う魔法が飛ぶの,どちらが楽しいかは言うまでもないだろう。

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 最後に,池田氏が現在の課題をまとめた。まずは,そもそもMR自体の認知が低いということがある。ゲーム画面を見せられないので,説明の際に形容しづらいのは大きな欠点だ。ただ,来場者は「AR・MRがやりたい」と言うよりも,「体験型で楽しいことがやりたい」と思うので,物語体験の一部としてどのようにMRを入れていくかを考えていきたいと話した。

 また,メタ情報が多いことも課題だ。どんなに没入感を演出しても,デバイスの装着時に操作などの説明が入るので,必ず現実に戻ってしまう。
 さらに,デバイスを装着すること自体が珍しすぎて,最初が体験のピークになりがちなのも,作り手としては悩ましい点だという。

 ビジネスモデルが未成熟であることも大きな課題だ。体験型エンターテインメントの中でも,code name:WIZARDのようなタイプはソフト開発費のコストがかかる。デバイスの費用やオペレーションコストも必要だが,体験型エンターテインメントである以上,料金はあまり高く設定できない。

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 今後のカクシンのチャレンジとしては,AR/MRだけでなく,いろいろなメディアを組み合わせた「WIZARD」世界の深掘りや,VR展開などを考えているとのこと。さまざまな課題を乗り越えて,XRがより一般的に楽しめるものになっていくことに期待したい。

「CEDEC 2021」公式サイト

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