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ハイブリッド開催のTGS 2022で盛り上がる要素は,どこなのか
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印刷2022/09/05 12:00

業界動向

ハイブリッド開催のTGS 2022で盛り上がる要素は,どこなのか

 9月15日から18日まで,ゲーム業界の下半期から来年に至るラインナップや施策を発表する展示会「第32回 東京ゲームショウ2022」(以下,TGS 2022)が開催されます。
 今回は,2019年のリアル開催以来,3年ぶりでのオフライン開催となります。と同時に,過去2年続いたオンラインでの配信開催をも兼ねたものになっており,ハイブリッド型の展示会仕様となりました。それぞれのいいとこ取りができる……のではないかと思います。

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 ちなみに過去のリアル開催のとき同様,初日と2日目(15,16日)はビジネスデーとしての開催が中心で,ゲーム業界関係者にとってはそこが正念場。かつては,ビジネスデーと言っても“ビジネス”に関係のない一般のお客さんが多く紛れ込んでいて,肝心のビジネス目的を達成できないことも多かったのですが,ここ最近では事前登録も徹底しており,業界人にとってはありがたい限りです。
 また,今回は一般公開日に入場制限がかかっているようで,完全に昔のようにはいかないかもしれませんが,なにはともあれオフライン開催は喜ばしいことです。


1カ所に多くの人が集中し過ぎないように、各エリア(1-3ホール、4-6ホール、7-8ホール)の人数を制限します。各出入口にセンサーを設置し、エリアごとの人数をリアルタイムで管理しています。エリア内の人数が既定数に達した場合、そのエリアへの入場を制限し、その他のエリアへ誘導させていただきます。混雑緩和後は再度入場可能です。TGS 2022公式サイトより抜粋



「ゲームは、絶対、とまらない。」……のだろうか


 今年の東京ゲームショウの,キャッチフレーズでもあるイベントテーマは
「ゲームは、絶対、とまらない。」

 東京ゲームショウの開催キャッチフレーズなんてあんまり気にしていないと思いますが,「絶対、とまらない」と断言しているものの,さほどの覚悟や緊張感が伝わってこない微妙なものです。ちなみにオンライン開催になった昨年と一昨年は以下のとおり。

2021年「それでも、僕らにはゲームがある。」
2020年「未来は、まずゲームにやって来る。」


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 いずれのキャッチフレーズ,イベントテーマも,新型コロナ感染症に立ち向かう気持ちを訴求したものなのでしょうが,なんとなくネガティブの要素のほうが強く,弱さを感じるのは筆者だけでしょうか。


増大する出展者とその背景


 筆者はすでにビジネスデー登録が終わっているため,開催日まで数日おきに東京ゲームショウ事務局からビジネスレターが来ます。
 今の時点で出展マップがオフィシャルに公開されていないので,大手各社がどの程度のブース・コマ数を確保しているのかがわかりませんが,今年の出展者情報に依るところでは,海外国別ブース,海外インディーズと国内インディーズ,そしてゲーム関連の人材派遣,マーケティング支援,ゲーム系専門学校などのゲーム周辺企業の出展が目立ちます。
 これらの数だけでも,毎年出展者数が増加/更新していることを強くアピールしている東京ゲームショウ事務局は満足しているのではないでしょうか。何しろほぼ毎年,前年比より増加であることを謳ってきたことですし。

 しかし,出展者数で喜ぶのは早いと思います。

 その多くは中小規模のゲーム関連企業と,国内と海外の様子見出展,またインディーズゲーム開発会社などだからです。とくにアジア系は中国大陸からの会社も多く,本国でゲームをリリースしづらい環境から脱却すべく,日米での展開中心に切り替えているところも多いと思います。


大手ゲームパブリッシャーはどうか


 冒頭で述べたようにTGSは,年末から年初にかけての新作ラインナップと施策の展示会です。各社とも,会場で初披露するコンテンツがあると思います。
 しかしここ数年は,各社ともにナンバリングタイトル,同じIP(インテレクチュアル・プロパティ=いわゆる“キャラクター”)を使い回したものがほとんどで,石橋を叩いてさらに渡らない……ような感じを個人的に味わってきました。
 それはパブリッシャーとしての体温が低いというか,温度感が温(ぬる)いという感覚です。さらに別の言い方をすれば,過去のレガシーに依存してばかりという緩さを感じてしまうのです。

 もちろんそれには事情があります。開発コンテンツの規模が大きくなり,多くの開発人員を擁し,開発期間が長引き,さらにそれが開発予算にチャージされることを考えると,そうやすやすと新規チャレンジタイトルを開発できない状況下にあることもまた事実です。
 その状況下で,日本国内のゲーム系パブリッシャーは,世界のゲームパブリッシャーと戦うということを強いられているわけですが,これは日本に限ったことでない国際的な事象なので,不公平や不公正ということはまるっきりありません。
 様々な面で産業構造が見直されつつある今の日本において,世界を相手に戦い続ける国内ゲーム系パブリッシャー/デベロッパーには頭が下がる思いですが,先ほどのような理由で,「続編」「亜種」「ハリウッド映画化」など比較的安全な策を講じているように思えるのは私だけではないと思います。
 しかもそれら「続編」「亜種」「ハリウッド映画化」にはもちろん要因があり,各社それぞれ,企業のスリム化/経営のスピード化と称して大規模なリストラも同時並行して行ってきました。その結果,新作を作るようなアイデアの余裕すらない企業もありますし,お金を稼ぐ頼みの綱だったスマホゲーム事業すら外部に売却したケースもあります。

 おそらく,TGS終了後の大本営発表は「昨年を上回る出展社数とタイトル,今年はハイブリッド型で大成功!」……と締めくくることでしょうが,現実はなかなか厳しく,これ以降は今まで以上に海外勢からの攻勢を受けることでしょう。

 しかも今年は,現時点(2022年9月2日)での公式サイトを見る限り

・任天堂 = 出展なし(これは例年どおり)
・SIE = インディーコーナーのみ出展
・マイクロソフト = 配信のみ


ということで,事実上プラットフォーマー不在のTGSとなる予感がします。東京ゲームショウの価値そのものも同時に,見直される時代に差しかかったということなのかもしれません。


東京ゲームショウのあとに起こるリセッション


 ついぞ先日の8月31日,「フロム・ソフトウェア テンセント子会社Sixjoyと株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)を割当先とする第三者割当増資を発表。調達額は364億円に上る」というニュースが出ました。
 それぞれの出資分はKADOKAWAの持ち分からの譲渡なので,KADOKAWAには大量のキャッシュが舞い込んだことでしょう。日本のIPが欲しいテンセントは,中国国内での企業活動が,政府の指針などの関係で思ったような方向性を見いだせないことなどもあり,香港子会社のSixjoyから現金を積んで出資したものと思われます。一方のSIEは,プレイステーションのコンテンツ戦略の一環として有力なゲームパブリッシャーを早期に自社陣営に取り込んでおきたいという意向があったに違いありません。

 そうでなくても,ここ最近の海外からの買収事例は,枚挙に暇がありません。この2年間の大きなものだけ抜き出してみても,以下のような感じです。

名越スタジオ(名越稔洋氏)
グラスホッパー・マニファクチュア(須田剛一氏)
SNK 
プラチナゲームズ 
Wake Up Interactive(ヴァルハラゲームスタジオの親会社)
小林裕幸氏(「バイオハザード」「デビル メイ クライ」など)

 上記で挙げた人や会社もそうですが,今回のフロム・ソフトウェアのように,新しいコンテンツの開発力や今までの実績を高く評価された結果が,今回の第三者割り当てにつながっていると思います。日本のコンテンツが世界で評価されているという証左ではあるのですが,TGS以降の下期には,このような海外からの買収事例がいままで以上に増えてくると思います。


終わりに


 先ほど書いたとおり,フロム・ソフトウェアの株式譲渡にエントリーしたSIEは,東京ゲームショウに「いままでのように」は出展しないと思います。
 任天堂は,当初から出展はせず独自路線を突き進み,ビジネスミーティングのみですし,マイクロソフトはどうやら本当に配信オンリーのエントリーのようです。

 プラットフォーマー不在の中,数で勝負の出展情報を出したり,頼みの綱であるeスポーツも“元年越え”ができないままだし,次世代コンテンツとして期待のかかるメタバースはいまだなんだか分からないもので,全体的にイマイチ盛り上がりに欠ける気がしています。
 来年以降の開催のモデルケースとしてどのように受け止め,どのように発展させるかが重要なポイントではないでしょうか。

 世界を見渡せば,新型コロナの亜種の蔓延は言うに及ばず,ロシアのウクライナ進攻によって引き起こされているありとあらゆるネガティブファクターが混迷を極めており,それらが心に引っかかってエンタテイメントを楽しめないのかもしれません。
 でもせっかくの3年ぶりリアル開催,ぜひ楽しみたいと思ってますので,東京ゲームショウ2022で皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

2019年のTGSから一枚。この熱狂がもう一度体験できるだろうか
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東京ゲームショウ2022公式サイト

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