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[インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合
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印刷2024/08/28 13:00

インタビュー

[インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

 2024年7月4日から6日まで,「IVS2024 KYOTO」「IVS Crypto 2024 KYOTO」が京都で開催された。どちらもスタートアップ企業関係者や起業家,投資家などが集まり,自社のサービスの紹介や数々の講演に参加できるというイベントで,後者はブロックチェーン技術にスポットが当てられていた。

 そんな「IVS Crypto 2024 KYOTO」には,Web3 Entertainment Zone「SHAKE」というエリアがあり,Web3対応のゲームなどが出展され,4Gamerでも取材している。

イベント会場。右手奥の青い照明が多いところがWeb3 Entertainment Zoneだ
画像集 No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

 また,このエリアではエンタメにテーマをしぼったステージイベントも行われ,トークショーや発表会が行われた。そして,Web3 Entertainment Zoneを取り仕切っていたのが,SHAKE Entertainmentだ。エリアの名前に社名も入っているぐらいで,Web3のエンタメ業界では影響力も大きく,世界最大のブロックチェーンゲームギルド「Yield Guild Games(YGG)」の日本支部であるYGG Japanともパートナーシップを結び,Web3エンターテインメントの拡大などに取り組んでいる。

 つまり,SHAKE Entertainmentは一般的な知名度こそ高くないが,Web3のエンタメに関わる人であれば知らない人はいないという会社であり,日本のWeb3ゲーム業界にとって鍵となる存在だ。そんな同社で代表取締役を務める椎野真光氏と,取締役である深沢哲也氏に,SHAKE Entertainmentの事業内容や,今後のゲーム業界についてお話をうかがった。

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  2024年7月4日,YGG Japanは新規プロジェクト「KATANA」の詳細を「IVS Crypto 2024 KYOTO」内で開催した新事業戦略発表会で明らかにした。また,衆議院議員(自由民主党)の平 将明氏らによる「世界と勝負する,日本発チェーンの『勝ち筋』」というパネルディスカッションも行われたので,まとめて紹介しよう。

[2024/07/05 17:08]

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。

椎野真光氏(以下,椎野氏):
 よろしくお願いします。

4Gamer:
 日本ではWeb3ゲーム(ブロックチェーンゲーム)の普及がまだまだ進んでいないというなか,SHAKE Entertainmentが具体的に何をやっていこうとしているのかなどを,聞かせてください。

椎野氏
 分かりました。いきなりこちらから質問してしまいますが,Web3ゲームで遊んでいますか?

4Gamer:
 仕事ということもあり,いくつか遊んでいますが,楽しめてはいない,というのが本当のところです。

椎野氏:
 正直な感想だと思いますよ。実際,ゲームとしてみたら,まだまだというものが多いですからね。

4Gamer:
 Web3の要素を無理に入れる必要はないんじゃないかと思うことも多いです。

椎野氏:
 それは日本のゲーム市場全体の話に関係していますね。ご存じだと思いますが,モバイルゲームに絞ると,日本の市場は6〜7%ぐらい規模が縮小しています。とくに日本産ゲームが大きく落ちていて,中国や韓国のゲームが支えているみたいな状況です。ですから,日本の会社が作ったゲームにしぼると,それこそ16%ぐらいは売上が落ちているんです。

椎野真光氏(左),深沢哲也氏(右)
画像集 No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

4Gamer:
 一時期と比べると,日本の会社からリリースされるゲームの数自体もかなり減りましたし。

椎野氏:
 ソーシャルゲームをメインにやっていた会社は酸欠状態といえる,厳しい会社が増えています。一時期はソーシャルゲームで十分に儲けを出せていたんですが,今は状況が変わってきており,同じようなものを作っていても売上は落ちていくばかりです。そこで活路を,PCのインディーゲームとWeb3ゲームに見いだそうとしている会社が増えているんです。

4Gamer:
 確かに自社開発のゲームをSteamでリリースする会社が一気に増えました。ただ,Steamはそれこそ世界中からゲームが集まり,そこでちゃんと開発費を回収できるゲームというのもかなり少なそうです。

椎野氏:
 そんな事情もあってWeb3ゲームで一発当てようみたいな動きが増えてきているわけです。

4Gamer:
 自国ではうだつが上がらなくなって,未開拓の新大陸を目指すみたいな。

椎野氏:
 実際,Web3ゲームはまだまだこれからの市場なので,早めにポジションをとっておきたい会社は多いでしょう。ですが,Web3ゲームを開発することはものすごく大変なんですよ。

4Gamer:
 これまでゲームを作ってきた経験がある会社でも難しいのでしょうか。

椎野氏:
 そうですね,順を追って説明しますね。Web3ゲームをゼロから開発するとなると,まずはブロックチェーントークンを発行し,そのトークンを投資家に買ってもらって開発資金を調達するというフェーズが必要です。
 そしてゲームを作っていってβぐらいの段階になったらさらに資金調達が必要なることが多いです。さらに,最初に用意したトークンをどこかの取引所に上場したうえで,日本でもサービスをしようとなると日本の取引所にも上場しないといけません。

4Gamer:
 トークンの上場となると,ゲーム開発の知見とはまったく別のものが必要になりますね。

椎野氏:
 そうなんです。これまでバリバリとゲームを作ってきた人達にとって,トークンの上場なんて面倒ですし,「そんなのやっていられるか!」みたいな気の遠くなる作業なんですよ。

4Gamer:
 なるほど,そこでYGG Japanが発表したブロックチェーン「KATANA」が効いてくるわけですね。

画像集 No.002のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

椎野氏:
 そうなんです,自社でトークンを発行してみたいなことはやっていられないけど,ベースのゲーム部分は自分達のところで作って,ブロックチェーン部分はKATANAを使おうとなってくれるといいなという狙いがあります。

4Gamer:
 ものすごく根本的なことを聞かせてもらいますが,Web3ゲームを作るにあたって,どのブロックチェーンを使うのかというは,最初の段階で決めないといけないのでしょうか。

椎野氏:
 基本的には最初に決めますね。

4Gamer:
 なるほど。チェーンを選ぶというのは従来のゲームでいうところのPlayStationかXboxのどっちで出すかみたいなイメージですかね。

椎野氏:
 その例えでいくと,Unreal EngineかUnityかみたいなイメージです。PlayStationかXboxのどっちで出すかという話だと,誰に売りたいかとなってきますが,どういったゲームを作りたいのかでゲームエンジンを選択するので,Web3ゲームにおけるチェーンの選択というのはそれに近いです。

4Gamer:
 ゲームエンジンも開発の最初に決めないといけないですし,そういうものなんですね。

椎野氏:
 ハイエンドなゲーム,グラフィックスがリッチなゲームを作りたければUnreal Engineを選ぶでしょうし,外部からいろいろな人達を呼んで開発するですとか,もっと軽いゲームを作っていこうとなれば,Unityといったように,自分達がリリースしたいゲームによって選ぶことになりますからね。
 そして,KATANAを使ってほしいのは,どちからというと後者のスタイルです。

4Gamer:
 なるほど,それでKATANAにLuaを採用しているんですね。

椎野氏:
 そうです。多くの開発者達になじみのある言語を使えるようにすることで,ブロックチェーンゲームの開発工数を大幅に減らせるんです。

4Gamer:
 LuaはRobloxで採用されているというのも大きそうですね。

椎野氏:
 ええ,Robloxにはゲームの中でレギュレーションを決めて,その中でプレイヤーが自由にコンテンツを作るような仕組みがあります。
 そういったコンテンツを作るときのオンボーディングコストを減らせるというのがKATANAの利点ですね。それこそ,Fully On-Chain Gameの開発ですとか。

KATANAの技術構造。Luaからブロックチェーンまでの流れ
画像集 No.003のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

4Gamer:
 Fully On-Chain Gameについては発表会でも触れていましたが,それがいったい何なのか,あらためて説明してもらえますか。

深沢哲也氏(以下,深沢氏):
 ものすごく簡単にいうと,ゲームのあらゆる情報がブロックチェーンで共有されているものです。例えば,現状でサービスされているWeb3ゲームは,ゲームの基本システムはこれまでどおりの仕組みで動いている中,キャラクターやアイテムをNFTとして扱うといったように,一部分だけをブロックチェーンにのせています。

4Gamer:
 まさに言葉のとおり,ゲームのすべてをチェーンにのせるといった意味なんですね。

深沢氏:
 ええ,ブロックチェーンゲームの理想みたいな形で議論されていて,どこまでブロックチェーンにのせればゲームとして楽しくなるのかといったことを探っている段階です。ですから,これからまったく新しい形のゲームが生み出されるかもしれないです。

4Gamer:
 なるほど。そこで発表会でもおっしゃっていた「ゼロ知識証明技術」もからんでくるわけですね。

深沢氏:
 そうです,すべてをブロックチェーン上にのせると処理限界などが発生するスケーラビリティ問題というものがあり,その問題を解決する一つの手段がゼロ知識証明を使ったZKロールアップという機能です。

 また,それ以外にもゲームのすべてをブロックチェーンにのせてしまうとゲームロジックなどもすべてパブリックになってしまうため,ゲームの楽しさが損なわれてしまう可能性があり,そうした楽しさを残すためにもゼロ知識証明を使って一部を秘匿するといった方法が模索されています。

4Gamer:
 まだ具体的なユースケースはみえていないなかでも,そういったゲームを作るうえで,KATANにはアドバンテージがあると。

椎野氏:
 ゲームシステム部分もチェーンにのせれば,それこそゲームの開発自体もいろいろな人ができるようになるわけです。それでどんなものが生み出されるのかは分かりませんが,そういうことがやりやすいというのがKATANAなんです。

画像集 No.007のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

4Gamer:
 天才的クリエイターのなかには,何かが見えているかもしれないですね。それこそ,インターネットが普及する前の段階でリチャード・ギャリオットには「ウルティマオンライン」の原型みたいなもののイメージが頭にあって,その後の潮流にのってMMOというジャンルを確立したように。

椎野氏:
 まったく新しいゲームを作る仕組みとしてブロックチェーンは可能性がありますし,それを最短最小のコストで作れるようにするのがKATANAの狙いでもあります。

4Gamer:
 椎野さんも元々はセガでゲームを作っていたわけですし,ゲーム開発者としてほしいものがKATANAにはあるといった感じですかね。

椎野氏:
 もちろん,ゲーム開発者としての視点は入っています。そしてKATANAの強みとして,YGG(Yield Guild Games)の存在があると思います。

4Gamer:
 それはどういうことですか。

椎野氏:
 KATANAで開発したゲームはYGGでマーケティングなどのサポートもできるからです。通常,例えばゲームエンジンの提供などであれば利用者に技術的なサポートは可能ですが,マーケティングやプロモーションはやりません。ですが,KATANAを使ってもらえれば,そのあたりのフォローが可能です。

4Gamer:
 なるほど。確かにいわゆるオンラインゲームとなれば,ほかのプレイヤーが必要で,YGGのサポートを得られればコミュニティにダイレクトにアプローチできるわけで,その利点は大きそうですね。

椎野氏:
 YGGであればグローバルにサポートできるので,チェーン選定においてかなりアドバンテージがとれるポイントだと思っています。

画像集 No.004のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

4Gamer:
 そういえば,KATANAの事業はどこでマネタイズするのでしょうか。

椎野氏:
 いわゆるガス代,決済手数料です。ただ,SHAKE EntertainmentとしてKATANAだけの収益というのはあまり重要視していません。

4Gamer:
 KATANAはあくまでも入口のようなのもので,会社としての収益は別のところでということですか?

椎野氏:
 KATANAの利用者が増えれば,KATANAの価値も高まります。そして,KATANAで作られたゲームのファンコミュニティ作りを下支えしていくことを考えています。

4Gamer:
 それがKATANAとは別に発表していたメディア事業なんですね。ゲームメディアなので4Gamerの競合になるかなと,構えていました(笑)。

椎野氏:
 メディアと呼んでしまうと競合っぽく聞こえますが,やろうとしていることは全然違います。私達の事業はあくまでもファンが作る場の提供になりますし,それこそプロが書いたレビューや攻略情報などは掲載されないですし。

4Gamer:
 ファンが自分達で発信できるとなると,治安維持といいますか,ある程度はコントロールする必要がありそうです。

椎野氏:
 まだ設計段階なので変わるかもしれませんが,そういったことも使用者に委ねてしまうことも考えています。

4Gamer:
 コミュニティの自浄作用に期待するみたいな。

椎野氏:
 あまり厳格なルールを設けると監視しあうみたいになる可能性もあるので,ユーザー同士が緩やかに場の雰囲気をコントロールできるようにしたいですね。

4Gamer:
 そこのファンコミュニティがあるとなれば,一次発信の場として利用するメーカーもでてきそうです。

椎野氏:
 ええ,もうそこはファンとゲーム運用サイドが溶けて混ざり合うみたいなイメージではいます。

画像集 No.009のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

4Gamer:
 4Gamerの記事は編集者やライターが書いていて,ファンの作った記事がそのまま掲載されるということはありません。そういう意味では性格がかなり違いますね。

椎野氏:
 一部のタイトルはDiscordを使ってコミュニティを運用して,運営サイドとファンが直接やりとりをするといった取り組もありますが,それをもっとオープンにするイメージです。

4Gamer:
 Discord内で公式からの情報提供があるみたいなこともありますが,確かに閉じられた場で,初心者にはハードルが高いかもしれません。意を決して中に入るみたいな。

深沢氏:
 ソーシャルゲーム/モバイルゲームにおけるDiscordの利用率は10%程度で,一般に普及しているとはいえませんしね。Discordで情報を取りにいく人というのは,本当にコアな人が多く,中で交わされている会話もかなり深いものになります。もちろん,コアファン同士のつながりなので,それはそれでいいのですが,やはり初心者は入りづらいです。

椎野氏:
 Discordはコミュニケーションツールであって,コミュニティツールでないんですよね。なので,うちがもっとオープンな場を用意して,残りの90%を取りにいくという狙いがあります。

4Gamer:
 それこそ,KATANAで作られるブロックチェーンゲームはUGCも多くなりそうですし,ファンも別のファンに向けて情報発信する場は必要になってきますし,KATANAもメディア事業もつながっているわけですね。


生成AIがエンターテインメント産業の変革


4Gamer:
 ところで,話はガラッと変わりますが,アニメ投稿サービス「Prince」を発表したPuri PrinceとSHAKE Entertainmentはどういう関係なんでしょうか。

椎野氏:
 グループ会社で私はPuri Princeの共同設立者ですね。

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「誰もがアニメクリエイターに」Puri Princeが描く新たなアニメ制作の未来とは? 戦略紹介イベントレポート

 2024年7月5日,Puri Princeは「IVS Crypto 2024 KYOTO」で,同社代表取締役の中山雅弘氏による事業説明会を実施した。Puri Princeが提案する“生成AI技術を活用したアニメ投稿プラットフォーム”は,「誰でもアニメクリエイターになれる」ことを目指しているという。

[2024/07/08 17:19]

4Gamer:
 ブロックチェーンゲームもそれこそ先ほど話しにあがったFully On-Chain Gameの文脈でいうと,いろいろなものを自動化させて,究極的な形としては運用者がいないゲームを作ろうみたいな方向に進もうとしています。そして何かと話題にあがることが多い生成AIも,いままで手動でチマチマと人間が頑張っていた作業を自動化してしまおうみたいな話ではあります。
 SHAKE Entertainmentでブロックチェーンに,Puri Princeで生成AIを活用したビジネスに携わっている椎野さんが頭に描いている未来の形がどんなものなか,聞かせてもらってもいいですか。

椎野氏:
 分かりました。

4Gamer:
 生成AIとブロックチェーン,椎野さんの肌感としては今年のIVSではどちらに注目が集まっていたと思いますか。

椎野氏:
 単純に比較はできませんが,Puri Princeでやろうとしていることを,ショートアニメ版TikTokと説明すると,皆さんの食いつきかたが凄かったですね。

4Gamer:
 ショートアニメ版TikTokといわれるとイメージしやすいですし,興味を持つ人は多そうです。

画像集 No.008のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合
椎野氏:
 生成AIによってアニメ制作の現場が大きく変わるということに気がついているアニメ業界の人は多いです。そして,それが将来的に自分達の首を絞めるだろうと予測しているんですね。そうなると,業界ど真ん中の人達は,生成AIをアニメ制作の現場に導入しようみたいなことは,表だってはいいづらいという現実があります。

4Gamer:
 生成AI,とくに画像の生成AIにはネガティブな意見もそれなり多いですしね。

椎野氏:
 そうです。そして彼らはそういったネガティブな意見はあえて見ないようにしているといいますか。そんな中,Puri Princeがアニメ制作の現場を変えるようなことをやりそうとなり,興味を持ってくれる人達が多いんだと思います。

4Gamer:
 素人でも簡単にショートアニメが作れるとなったら,ちょっと試してみたいという気になりますしね。

椎野氏:
 Puri Princeで用意しているツールではプロンプトを書いて画像を生成する以外にも,たとえば○とか×をざつに書いて〜みたいなやり方でもかなりクオリティが高いアニメーションを作れます。アニメだけでなく,漫画とかもかなりいけますね。

4Gamer:
 私のように絵心がない人間にとっては夢のようなツールです(笑)。

画像集 No.005のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

椎野氏:
 本当に夢のように凄いですし革命的なことなんですが,これで何が起こるかというと,日本のアドバンテージの喪失です。Puri Princeの発表会でも説明されていましたが,生成AIの導入によってアニメの制作費を大幅に下げ,制作期間も大幅に短縮することが可能になります。さらに,海外のアニメスタジオが作るアニメのクオリティもあがるわけです。

4Gamer:
 そうなると確かに,日本のアドバンテージがなくなりますね。

椎野氏:
 ショートアニメが溢れ,もっというとYouTubeの動画のほとんどがアニメになる,それくらい行き着くところまでいくんじゃないかと思っています。その中で日本は何ができるのかを考えないといけないわけですが,そんな事態が起こることを早く示すのが,Puri Princeの役目なわけです。

4Gamer:
 確かに動画生成AIの「Dream Machine」が一般公開されたときは,謎動画が量産されましたし,簡単にアニメが作れるとなれば,あらゆるSNSがアニメコンテンツで溢れかえりそうです。

椎野氏:
 Dream Machineのリリースみたいなイノベーションがこの先2〜3年ぐらい続き,本当に誰でもアニメを作れる時代がくると思います。

4Gamer:
 楽しそうでもあり,恐ろしい時代ですね。

椎野氏:
 ええ,コピー的なコンテンツが大量にでてきて,まさにコンテンツで溢れかえるようになりますが,その中で日本人の独創性みたいなものをいかに打ち出せるか,そこが重要になるでしょう。
 SHAKE Entertainmentの強みはやっぱりコミュニティで,ユーザーが新しいゲーム,アニメ,漫画を作り,そしてそれをユーザーが楽しむというのが次の時代です。いままではクリエイターだけが作って,ユーザーが楽しむという関係性でしたが,そこが溶けて融合するようなイメージです。

4Gamer:
 確かにそうなるとコミュニティを作れるプラットフォームを持っているというのは,強そうです。SHAKE Entertainmentといいますか,椎野さんが描いている未来で勝負できる刀を研いでいる最中なんだなというのがよく分かりました。
 本日はありがとうございました。

画像集 No.010のサムネイル画像 / [インタビュー]SHAKE Entertainmentの椎野真光氏が描く,テクノロジーとクリエイティビティの融合

 SHAKE Entertainment,YGG Japan,そしてPuri Prince。一見すると異なる分野で活動しているように見えるこれらの企業が,実は椎野氏の頭の中で緊密につながっていることが今回のインタビューで分かった。ブロックチェーン技術と生成AIという,注目を集める二つの技術を軸に,椎野氏は日本のエンターテインメント産業の未来を見据えているようだ。

 KATANAを通じてWeb3ゲームの開発をより身近なものにし,同時にPuri Princeでアニメ制作の民主化を推進する。そして、これらの新しいコンテンツを受け入れるプラットフォームとしてのコミュニティ作りも視野に入れている。技術革新によって誰もがクリエイターになれる時代,そしてコンテンツで溢れかえる世界で,日本のクリエイティビティをどう活かすか。椎野氏の描く未来図は,日本のエンターテインメント産業全体に対する一つの提案とも言えるだろう。

 技術の進化のスピードを考えると、椎野氏のビジョンが現実のものとなるか、あるいはまったく異なる展開を見せるか、その答え合わせの時期は思いのほか早く訪れるかもしれない。エンターテインメント産業に関わるすべての人々にとって、目が離せない動きとなりそうだ。

「KATANA」公式サイト

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