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海外ゲーム企業の中国進出は今がチャンス。中国ゲーム業界事情とビジネスの変化が語られたセッションをレポート[CEDEC+KYUSHU 2024]
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印刷2024/12/03 20:01

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海外ゲーム企業の中国進出は今がチャンス。中国ゲーム業界事情とビジネスの変化が語られたセッションをレポート[CEDEC+KYUSHU 2024]

 福岡・九州産業大学で2024年11月23日に,コンピュータエンタテインメント開発者向けのカンファレンス「CEDEC+KYUSHU 2024」が開催された。
 本稿では,Xiamen Leona Software Founderの高橋玲央奈氏と,日中エンターテインメント経済推進協議会 代表理事 山野辺一記氏によるセッション「中国のゲーム業界事情とゲームビジネスの変化。実は規制が経済を加速させた」をレポートしよう。

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中国ゲーム市場の規模


 中国のゲーム市場は,モバイルゲーム市場とPCオンラインゲーム市場があり,2017年から2021年にかけて全体で145%,モバイルゲーム市場が194%と大きく成長している。しかし高橋氏によると,これはあくまでも公式の発表であり,統計データとして表に出ていない部分ではPCオフラインゲームが推定629〜2138%,家庭用ゲームが1123%とより大きく成長しているそうだ。

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 なぜこんなことになっているのかと言うと,中国で公式に発表されている統計データには,中国のゲーマーが海外のプラットフォームでゲームを購入したデータが含まれていないからだ。例えば,中国以外の国のSteamから購入したゲームは,中国の公式統計データには含まれていないというわけである。

 実際のところ,Steamの言語別ユーザー数の割合を見ると1位が英語で39%,2位が簡体字中国語が35%となっている。しかし英語がさまざまな国や地域で使われるのに対し,簡体字中国語は基本的に中国でしか使われない。すなわち,Steamで配信されているPCゲームのうち,かなりの割合が中国で購入されていると高橋氏は説明する。

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 また企業規模を見ると,中国2位のNetEaseはグローバルの年商で任天堂とほぼ同等,1位のTencentは中国国内の年商だけで任天堂を上回る。miHoYoやPerfect Worldも日本トップクラスのゲーム会社に引けを取らない規模となっている。加えてGame Scienceは「黒神話:悟空」のリリースからわずか2か月で1500億円の売上を記録している。

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中国ゲーム市場の変遷と規制,規制の抜け道


 中国ゲーム市場の変遷も紹介された。高橋氏によると,1990〜2000年代にかけての中国では,ファミコン互換機の「小覇王」と海賊版ソフトが席巻していたという。さらに2000〜2015年にかけて家庭用ゲームが規制されたため,その期間は並行輸入版と海賊版のソフトが横行するブラックマーケットと化した。
 ただし,任天堂も黙って見ていたわけではなく,中国にiQueを設立し,規制から除外されていた携帯ゲーム機を展開して,独自に中国での売上を伸ばしていったとのこと。

 PCゲームでは,1994年に初の中国産タイトル「神鷹突撃隊」(Magic Eagle)がリリースされた。同時期にデジタルゲーム業界団体・音数協が発足し,2004年から中国最大のゲームイベントChinaJoyを主催することになった。

 2000年代前半には,PCオンラインゲーム市場が確立し,盛趣遊戯やPerfect Worldなどが台頭。結果として,グレーの家庭用ゲーム機市場とホワイトのPCオンラインゲーム市場という構図が長らく続くこととなる。

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 2015年には,家庭用ゲームが解禁となる。2019年,Tencentと任天堂のコラボによりSwitchの中国国内版が登場するが,中国でゲームをリリースするには版号と呼ばれるライセンスが必要となる。しかし2018年には10か月間ライセンスが出ず,そのあいだ新作ゲームがない事態となり,中国国内版Switchは既存のゲーム数タイトルしか遊べない状態となったそうだ。

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 そんな状況の中,中国の通販大手アリババグループのECサイトであるタオバオでは,Switchの日本版と香港版を大量に扱い,多くの人はそれらを購入してゲームを遊ぶようになったという。
 そうした人達が,日本もしくは香港のニンテンドーeショップからゲームを購入するようになった結果,上記のとおり中国の統計データには出ないが正規版のゲームが流通する市場が形成されていったというわけである。

いわゆる「版号ショック」も紹介に。2018年には粗製濫造を抑止するために,2021年には未成年がゲームにハマり過ぎないようにという理由で,版号が出ない時期があった
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 中国で販売できないゲームにも言及がなされた。2021年にはネット通販などでそれまで販売されていたゲームが消えたという事態があった。その理由は発表されていないが,ゲーム業界では中国の「オンラインゲーム管理規定」に抵触したからではないかと推測されているとのこと。
 例えば「スーパーマリオメーカー」「あつまれ どうぶつの森」は,プレイヤーが作成したコンテンツをオンラインで公開できるが,反中国的な内容にすることも可能だからではないかと言われているそうだ。

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 中国でゲームを配信するには,基本的に政府の審査が必要となる。また必要なライセンスである「ネットワークゲーム出版番号」(版号,ISBNなど)は外資系・外国企業は直接取得できないため,現地パブリッシャと提携する必要があるとのこと。
 加えて版号は,ソフトウェア著作権を持っている会社しか取得できない。さらに商標関係や未成年対応もきちんとやらないと,ゲームをリリースできなくなっていることも説明された。

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 そうした中,2022年に「Elden Ring」がリリースされ,中国でも大ヒットとなった。時期的には版号が止まっていたのだが,多くの人が並行輸入で購入したことが要因だったという。
 政府は,そうしたライセンスを取っていないゲームの動画配信をするなという旨の禁止令を出したが,誰も守らないという状況になっているそうだ。

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 中国におけるゲーム配信には抜け道があり,海外企業が利用していることも紹介された。1つはHTMLゲームで,課金要素がなく,広告マネタイズだけであればOKとのこと。とくに中国は人口が多いため,ある程度のプレイヤーを獲得できれば,広告収入だけで十分な利益が見込めるという。

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 またSteamは,グロバール版と中国版の双方が中国国内からアクセスできるそうだ。そのため大半の人はグローバル版を利用している。

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 家庭用ゲーム機に関しては,中国市場が日本市場と同等かそれ以上の規模になっていると言われているそうだ。
 例えば中国で流通しているSwitchのおそらく9割は,中国外からの輸入盤になっているとのこと。また並行輸入品として,上記の中国で販売できないゲームなども店頭に並んでいることや,SNSを介して有志を募りゲームを並行輸入で共同購入していること,日本での代理購入が行われていることなども示された。

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 クラウドゲームの仕組みを使い,スマートフォンでPCのリモートデスクトップを起動してSteamを起動し,アカウントを紐付けてゲームをダウンロードさせる手法も抜け道として紹介された。Steamを介さない場合,違法となるそうだ。
 意外なところでは,日本の同人コンテンツのオンライン通販サイトであるDLsiteを中国から利用しているケースも多いことなども紹介された。

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自身のコンテンツをグローバル配信する際のパブリッシャ選定に関する注意点も紹介された
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中国におけるゲームのマーケティング


 中国では,ゲームのマーケティングに関しても上記のライセンスがないと展開できない。とは言え,現状はインフルエンサーを使ったマーケティングしか通用しない事態となっているそうだ。
 動画プラットフォーム上で展開するマーケティングであれば問題ないので,日本と同様にフォロワー数×1〜2円といった相場でインフルエンサーに動画を作ってもらって……ということもできる。
 しかし中国は人口が多いため,300万フォロワーのインフルエンサーも普通にいるので,日本と同じ感覚だと10分の動画を作ってもらうのに300〜600万円もかかるため,なかなか予算感が合わないことにもなり得る。そのためゲームイベントやコンテストに出展するなど,情報発信の機会を増やすことが重要となるそうだ。

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 ゲームイベントは,中国最大のChinaJoyに加え,インディーゲームのパブリッシャが参加するWePlayが紹介された。WePlayは政府のチェックが入らないため,海外コンテンツの展示が比較的容易だという。

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WePlayの展示。露出の多い女性キャラクターの展示や,日本や香港,台湾からの出展もある
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 また中国最大の短編アニメコンテスト 厦門国際動漫説は,2018年よりゲームコンテストを開始しており,過去には日本のインディーゲームタイトルも受賞している。

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2018年から2020年にかけては日本のインディーゲームタイトルの受賞が目立つが,2024年には0本になった
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上海・南京路が,かつての秋葉原を彷彿とさせる街並みになっていることも紹介された。アニメイトやDLsiteといった日本企業の出展もあるという
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上海・中国音数協ゲーム博物館には,ニンテンドーミュージアムに引けを取らない展示がなされているのだとか
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杭州や広州,厦門の街並みも紹介
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 高橋氏は,以上を踏まえて,Switchの海外版市場やSteam市場を使って海外企業が中国に進出できるようになり,かつ市場が拡大している今,大きなチャンスであるとする。
 とくに日本企業は文化的・地理的に近い中国をより理解して,積極的な展開が可能とのことで,高橋氏は任天堂とバンダイナムコグループが自社展開と現地企業との共同展開を使い分けて成功していることを挙げていた。

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日中エンターテインメント経済推進協議会の事業と目的


 山野辺氏からは,日中エンターテインメント経済推進協議会(JCEE)の事業と目的が紹介された。それによるとJCEEは中国のゲーム企業やエンターテインメント企業と,日本のそれらをつなぐ活動をしている団体とのこと。具体的な目的や事業内容に関しては,以下のスライドで示された。

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 セッションの最後に,山野辺氏は高橋氏が紹介した版号の問題を例に出し,中国の政策に絡んだ問題や国民性に関わる問題といったトラブルは,ゲーム業界を初めさまざまなエンターテインメント業界で起こり得るものであるとし,それらを避けるためにJCEEを活用してほしいと話していた。

「CEDEC+KYUSHU 2024」公式サイト

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