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あれは「大神」「ワンダ」「KILLZONE」へのオマージュだったの!? サントラ制作秘話やイーノックにまつわる衝撃の事実も明らかになった「エルシャダイ」インタビュー&プレイレポート
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印刷2011/04/28 22:29

プレイレポート

あれは「大神」「ワンダ」「KILLZONE」へのオマージュだったの!? サントラ制作秘話やイーノックにまつわる衝撃の事実も明らかになった「エルシャダイ」インタビュー&プレイレポート

KILLZONEにターンX? アマテラスとダンテ!?

喜んでもらってなんぼの怒濤のオマージュ


4Gamer:
 エルシャダイといえば,発売前から大きなブームを巻き起こしたタイトルですけど,その盛り上がりを見ていて,甲田さんとしてはどうでした?

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甲田氏:
 いやー,まったく予想できなかったですね。とりあえず,初めてゲーム画面を見せてもらったときに,「こんなの見たことない」と思ったのは確かです。
 ネット上を中心にエルシャダイが大ブレイクしたのは,TGS 2010くらいからですかね?

木村氏:
 大ブレイクはそのタイミングですね。感度の高いゲームファンの方は,E3 2010くらいから「へんなのがあるぞ」と注目していただいていたようですが。

甲田氏:
 外資系メーカーの作品だし,グラフィックスも独特だし,最初は日本のゲームだと思われていなかったんじゃないかな(笑)。
 でも,エルシャダイは本当に「挑んでいる」感じがするタイトルですよね。求められるクオリティも高かった。あの,秀逸なネタとしての盛り上がりを見てからは,逆にすごく真面目に壮大な曲を作ってやろうという気分になりました。良い意味で,ファンの期待を裏切ってあげたいなぁと。

竹安氏:
 いい音楽って,最初の5秒くらいで聴き手をグッと引きつけるじゃないですか。Star Warsしかり,スパイダーマンしかり,バック・トゥ・ザ・フューチャーしかり。最初の引きは重要ですよね。

木村氏:
 最初のフレーズで「エルシャダイの曲だ!」と気付いてもらえるだけで,オープニングテーマは成功してますよね。音楽からも,エルシャダイがネタだけのゲームじゃないことが分かってもらえると思います。

竹安氏:
 でも,エルシャダイに込めたネタで笑ってくれたのは,実はお客さんが最初なんですよね。「これ絶対笑うところやろう」と思いながら,社内の人間に見せたりしても,仕事で関わっている人達って笑ってくれないんです。

木村氏:
 いやー……社内の人間は仕事として真面目にやってるし,笑ってはいけないのかと思いますよね(笑)。

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竹安氏:
 職場の目線とお客さんの目線って,やっぱりチューニングしにくいところはありますよね。どうしても仕事のフィルタがかかっちゃうから。TGS会場なんかでお客さんが笑っているのを見て,僕なんかは「ほら,笑うやろ?」と得意顔だったんです。でも会社のみんなは,「おい,エルシャダイが笑われてるぞ!」と(笑)。

4Gamer:
 面白エピソードにもほどがありますね……。竹安さん的には,そういったゲームファンの反応は予想通りだったわけですか?

竹安氏:
 予想はしていたけど……ちょっと笑われすぎてるなぁと。

4Gamer:
 そこまで笑わなくてもいいだろうと(笑)。

竹安氏:
 僕は,映画とかお笑い番組なんかを比較対象として映像を作っていたんですけど,確かに普通のゲームのトレーラーと比べたら,ズレてますよね。でもエルシャダイは,インパクトでしか勝負できなかったですから。有名な会社の作品ではないので。

4Gamer:
 結果的には大成功ですね。

木村氏:
 しかし,竹安のネタを最初からずっと見てますけど,お客さんはそっちに食いつくんや……と意外に思いましたね。

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竹安氏:
 そもそも「そんな装備で大丈夫か」「大丈夫だ,問題ない」って,「KILLZONE」のオープニングムービーのオマージュですからね。

4Gamer:
 気付かなかった……。

竹安氏:
 僕はKILLZONEが大好きなので,あれを面白くしてやれと。パクりじゃないですよ,オマージュですよ。

4Gamer:
 みんなあのインパクトにやられて,オマージュに気づく余裕がなかったんでしょうね。

竹安氏:
 ほかにも,「Star Wars」のオマージュとかちらほら入れてますね。ライトセーバーだったり,砂漠だったり,ダースベーダーだったり。良いデザインはパクリ上手……いやオマージュ上手だと思うんです。世の中に100%のオリジナルなんてなかなかないですからね。

木村氏:
 エルシャダイは間違いなく,竹安色になっているからね。PVもゲームそのものも。

竹安氏:
 この際だから言ってしまいますが,アマテラスが人間になったらというイメージが,イーノックのデザインの素なんですよ,実は。

4Gamer:
 ちょ,今とんでもないことを言いませんでしたか?

竹安氏:
 僕の中では,イーノックはアマテラスとダンテの中間なんです。

4Gamer:
 言っちゃった! しかもダンテが加わっている! でもそう言われると,イーノックってちょっと犬っぽいかも……。

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甲田氏:
 そんな大事なこと,先に言ってくださいよ……。曲を作る前に教えてほしかった(笑)。

竹安氏:
 あとイーノックは,のちにメタトロンになりますよね。メタトロンは母性を象徴していて,さらにその象徴として,乳房の丸みをイーノックの鎧のデザインに盛り込みました。加えて,僕はシド・ミードが好きなので,彼のデザインも参考にしました。

4Gamer:
 ……ターンX!? 

竹安氏:
 です。あとミカエルの手だって,「ワンダと巨像」に対するオマージュですからね。作ったあと,上田文人さんと直接お会いする機会があって,そのことも伝えたんですが,喜んでいただけて嬉しかったです。ほんとオマージュだらけやな(笑)。

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ライブや映像化,そして続編の可能性は?

ファンを含むさまざまな人達に助けられたエルシャダイ


4Gamer:
 実際にゲームをプレイさせてもらいましたが,エルシャダイはゲームと音楽が本当に調和してますよねぇ。変化し続ける世界に呼応ように次々と新しい音楽が流れてくるので,アクションの面白さと相まって,プレイしていて本当に気持ちが良かったです。

画像集#027のサムネイル/あれは「大神」「ワンダ」「KILLZONE」へのオマージュだったの!? サントラ制作秘話やイーノックにまつわる衝撃の事実も明らかになった「エルシャダイ」インタビュー&プレイレポート
甲田氏:
 ありがとうございます。エルシャダイの楽曲は本当にバリエーション豊富で,個人的にも集大成的なものに仕上がりました。Devil May Cryのような激しい曲調や,ステージ用のアンビエント,ボス戦はオケサウンドでモンスターハンターを彷彿させるし,良いタイミングで良い作品に関わることができました。こんなに豪華な収録をやらせてもらったのも初めてですし。

木村氏:
 オケ収録,やっぱり良かったですか。

甲田氏:
 すんごい良かったです。オケ収録は国内で直にやらせてもらいましたけど,遠隔収録のコーラスも本当に刺激的だったし。

4Gamer:
 ネフィリムのステージも,曲調がガラッと変わって面白かったですね。

甲田氏:
 あそこは,ステージ構成もガラッと変わるところなので,かなり楽しんで作曲しましたね。音色の雰囲気は変えるんだけれど,メロディはすべてエルシャダイのテーマという。

4Gamer:
 俺は「星のカービィ」を遊んでいるのか……と錯覚しそうなほどの衝撃を受けましたよ。

竹安氏:
 あそこまでいくと,プレイヤーも考えることをやめそうですよね。こうくるか……じゃあ乗っておくか……と。

甲田氏:
 振り幅が大きいモノがあると,世界観の範囲もそれに伴って大きくなるから,その後なにがあっても驚かなくなるなりそうですよね。

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木村氏:
 そういえば,エルシャダイでは公式サイトに,定期的に曲や壁紙をアップしていたんですが,更新するたびにファンから大きな反響がありました。東日本大震災のあと,被災地からもメールがきましたよ。
 地震直後,アップ予定だった最後の曲を,どうしようか悩んだ末に上げたんです。そしたら被災地からメールが送られてきて。


4Gamer:
 それは……どのような内容だったんですか?

木村氏:
 電気と電波はかろうじて通じているから,楽しみにしていたエルシャダイの曲を聴けました。楽しみにしているので,発売延期や発売中止には絶対にしないでくださいね……と。それを読んで,社内のみんなで泣きましたよ。嬉しかったです。

竹安氏:
 それを切っ掛けに,地震の影響で滞っていたサントラの作業を急ピッチで再開しました。サントラが無事発売できたのは,そのユーザーさんのメールのおかげかもしれません。

4Gamer:
 サントラ発売の裏にそんなエピソードがあったとは……。ちなみにサントラの公式サイト,かなりキテレツなことになっていますが,あれは竹安さんのアイデアですか?

竹安氏:
 いえ,僕も公式サイトを見て驚きました。

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木村氏:
 あれは,スクウェア・エニックスさんにかなり助けていただいて……全力で遊んでいただいたおかげで,プロモーションに弾みがつきましたね。

竹安氏:
 スクウェア・エニックスさんもそうですが,コラボ企業さんがエルシャダイのことを凄くリスペクトしてくれていて。面白いものだからこそリスペクトしてくれているわけで,そう考えると非常に有り難いです。愛があります。

木村氏:
 サントラ自体も,スケジュールを考えると奇跡のようなスピードで発売にこぎ着けました。多方面にわたる地震の影響で,本当に発売できるのか心配だったんですが,甲田さんもサントラのアレンジ作業を全力でやってくれて,スクエニさんもすごい勢いで作業してくれて,竹安も入魂の公式ドヤ顔を描いてくれて。

竹安氏:
 サントラジャケットの公式ドヤ顔,あまり笑ってもらえなかったんですよね……。やっぱり本気で描いてしまうとあかんのやと。何やら普通に絶賛されてしまって。

4Gamer:
 絶賛されるよりも,いじってほしかったんですか(笑)。

竹安氏:
 だってこれ,僕にとっては一番いいイーノックなんですよ。本当はパッケージ画像に使いたかったんですけど,本社から「甘すぎる」と却下されてしまいました。
 エルシャダイに関してイヤなのは,この絵は良い,この絵は良くないと言われても,全部僕の絵なので,対話ができないんですよ。他の人の絵と比べられるなら納得もいくんですが,全部自分の絵なので「そうですかねぇ」って言えない。勝てない裁判が延々と続いているような気分です。

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4Gamer:
 ちなみに,サントラの中でお気に入りの曲はありますか?

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甲田氏:
 僕はやっぱりテーマ曲ですね。テーマ曲をベースとして,そこから切り出して派生させている曲も多いです。コレ一曲を聴けば,エルシャダイの物語を思い返せるというのが理想なので,そういう意味でもうまくいったと思います。

竹安氏:
 僕はサリエルが登場するシーンですかね。仮面舞踏会みたいな雰囲気で。あれは格好いいなぁ。モテモテの音楽ですよね。

甲田氏:
 愛がテーマの曲です。とにかく甘いメロディ。サリエルは線が細くて繊細な感じがするので,ソロバイオリンの激しいメロディが合うんじゃないかなぁと。シングルカットするならコレがオススメですね。

木村氏:
 どれか一曲選べといわれたら,さっきも話題に出たネフィリムステージのアレンジかなぁ。可愛いらしい生音なんだけど,どこかテクノっぽいというのが凄く良かったです。あの壮大な曲が,アレンジ一つでこうなるか! という驚きは,ぜひゲーム中でも体験してもらいたいですね。

4Gamer:
 ネフィリムステージまでのプレイの積み重ねもあるし,遊んだ人は絶対驚くと思いますよね。
 そういえば,こんなことを聞くのはまだ早いかもしれませんが,エルシャダイのライブとか,どうですか?

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竹安氏:
 ぜひやってみたいですね。僕はやる人じゃないので,聴くだけですけど。でもサントラの売り上げによっては……。

木村氏:
 売れ行きと,その後の盛り上がり次第では,可能性はなくもないですよね,きっと。

甲田氏:
 あとは,来てくれるお客さんがいれば。ぜひやってみたいですね。エルシャダイの楽曲は,生音で聴くと本当にすごいですから。

4Gamer:
 あと,竹安さんは映画好きですし,映画化とか。

竹安氏:
 それは絶対やってみたいですよ。誰か出資してくれれば,すぐにでも。

木村氏:
 親会社が映画もテレビもやっているので,映画化するなら面倒見てくるかもしれませんね。そういう展開も望まれているコンテンツだと思うので。
 竹安の中のエルシャダイは,まだ一部しか表現できていないので,チャンスさえあればきっとやってくれますよ。

竹安氏:
 できればエルシャダイで,すべてのエンターテインメントを食いつぶしてみたいです(笑)。まぁベースがゲームという時点で,実写化は難しいかもしれませんが,フルCGとかならみんな喜んでくれそうですよね。

甲田氏:
 そのときにはぜひ僕を音楽担当に(笑)

竹安氏:
 もちろんですよ! 何かやるならぜひフルメンバーで挑みたいですね。

4Gamer:
 今後の展開に関しても,期待が高まるばかりですね……。ついでに聞いてしまいますが,もちろんゲームの続編だってあり得ますよね?

竹安氏:
 諸々の都合がつけば,いつだってやりますよ(笑)。

画像集#033のサムネイル/あれは「大神」「ワンダ」「KILLZONE」へのオマージュだったの!? サントラ制作秘話やイーノックにまつわる衝撃の事実も明らかになった「エルシャダイ」インタビュー&プレイレポート

4Gamer:
 そろそろお開きの時間ですね……。名残惜しいですが,最後に,エルシャダイファンに向けてのメッセージをお願いします。

甲田氏:
 先ほどもいいましたけど,エルシャダイの楽曲は,個人的にも思い入れの強い,集大成と呼べる仕事になりました。オリジナルタイトルを,一からじっくり,最後まで作り上げることができたのが,本当に楽しかったです。サントラを手に入れれば,好きな音楽がいつでも聴けるので,ぜひ購入を検討してみてください。

木村氏:
 エルシャダイの楽曲は,本当にバリエーション豊富で飽きません。仕事で延々と聴いていた僕が,いまだにずーっと聴けるくらいです。ゲームをプレイした人も,そうでない人も,エルシャダイの世界観を,ぜひサントラで再確認してみてください。

竹安氏:
 今回,サントラをスクエニさんが発売してくれたことは,ゲーム業界にとってとても大きな意味をもっていると思います。良い作品を作れば,企業の障壁を越えて,いろんな会社がつながれるんだという恰好のサンプルになったんじゃないでしょうか。ゲーム業界が今後も,面白いモノをみんなで育てていけるような業界であり続ければいいなと思います。エルシャダイは,そういった流れを作った作品としても,日本のゲーム史に残るタイトルになったと信じています。いいタイミングで,いい作品に関わることができました。
 サントラに関して言えば,実は他社からも打診がきていたのですが,今回は末永くお付き合いできそうな愛情を感じさせてくれたスクエニさんに決めました。スクエニさんとしても,自社IP以外のサントラを発売するのは初めてとのことです。さらに先日,業界で初めて,日本マイクロソフトとソニー・コンピュータエンタテインメントが合同で体験会を開催してくれるという幸運にも恵まれました。これも素晴らしいことだと思います。
 不可能を可能にしてきたエルシャダイですが,最終的にこの作品を育てるのはファンの方達だと考えています。ゲームとサントラに,ぜひ一度触れてみてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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 さて,若干変則的な体裁となってしまったが,エルシャダイのプレイレポート&インタビューはいかがだっただろうか。インターネット上を中心とした発売前からの大ブームによって,「ネタありきのゲームなんでしょ?」という見方をしていた人も少なくないだろうが,実際にゲームをプレイしてみれば,その斬新な映像美と,(こう言っては失礼かもしれないが)想像以上にしっかりとしたゲームデザインに驚かされるはずだ。奇妙な味のあるネタ部分の面白さについては,言わずもがなだろう。
 一方のインタビューでは,エルシャダイに込められた数々のオマージュや,産みの苦しみが語られただけでなく,ファンやコラボ企業から寄せられるエルシャダイ愛を,あらためて確認することができた。ゲームやサントラの売り上げが,今後どのように推移するかは分からないが,「ネタ」の一言では済ませられない数字を出すだろうと筆者は信じている。
 インタビューでも語られていたように,竹安氏の頭の中には,さらなる「エルシャダイ」のアイデアが詰まっている。今後,エルシャダイがどのような展開を見せるのか,大いに期待したいところだ。

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