企画記事
お正月は「ダンジョンズ&ドラゴンズ」で遊ぼう。無料配布の日本語版ベーシックルールで挑む第5版プレイガイド(短編シナリオ付)
そこでこの記事では,この年末年始を利用して,最新のD&Dを楽しんでみようという,プレイガイドをお届けしたい。しかも,完全に無料でだ。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」は,ダンジョンに潜ってドラゴンと戦うのが基本だった初代から版を重ね,現在はあらゆる面でパワーアップした第5版が最新版となっているのだが,そのベーシック・ルールが現在,ホビージャパンの第5版公式サイトで無料公開されている。これを使って,お手軽に挑戦してみようという算段である。
なおテーブルトークRPGのなんたるかや,第4版までのD&Dの歴史については,以前に掲載した「こちら」の記事に詳しいので,テーブルトークRPG自体の初心者は,まずそちらから読み進めてもらっても構わない。また,第5版の概要については,ベーシック・ルールの無料公開時に掲載した,「こちら」の記事に詳しい。本稿でも現在の状況に合わせてアップデートしつつ補足を入れていくが,合わせて参考してもらえれば幸いだ。
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「ダンジョンズ&ドラゴンズ」公式サイト
ベーシック・ルールでできること
■プレイヤー用
- 4種族4クラス,20レベルまでのキャラクター作成ルール
- 各種判定や戦闘についての基本ルール
- 魔法と呪文についてのルールとデータ(一部の変則的なものを除く)
種族はヒューマン/エルフ/ドワーフ/ハーフリングの4種族,クラスはウィザード / クレリック / ファイター / ローグの4クラスだ。20レベルというのは,現時点での最高レベルなので,これだけでどこまでも遊んでいける。
一方,製品版の「PLAYER'S HANDBOOK」(日本未発売/49.95ドル)では,9種族12クラスのキャラクターデータが含まれているほか,高レベルキャラクターが取得できる学派・領域・類型(サブクラスのようなもの)が選べるようになり,さらに多彩なキャラクターを生み出せるようになっている。
■ダンジョン・マスター用
- 数多くのモンスターデータ
- 戦闘遭遇の手引き(バトルバランスの調整方法)
- 最低限の「魔法のアイテム」データ
DM用のベーシック・ルールは,そのほとんどをデータが占める。いずれもゲームを楽しむに十分な量だが,高レベルのモンスターは数が少なく,とくにフィーンドと呼ばれる異界の魔物(デーモンやデヴィルなど)については,意図的に記述が少なくなっている。一方で,恐竜や有史前の動物関係は充実しているので,これはイラストがなくても姿が想像しやすい,あるいは図鑑などで調べられるモンスターを優先的に選んだ結果なのだろう。
また,製品版の「DUNGEON MASTER'S GUIDE」(日本未発売/49.95ドル)にあたる部分も,ベーシック・ルールには含まれない。ダンジョンマスターを担当するにあたっての心得や,オリジナルシナリオ(D&Dではアドベンチャーと呼ぶ)の作り方などが書いてあって大変ためになるのだが,この辺りはどんなテーブルトークRPGにも共通するものでもある。
第4版以前のものや,ほかのゲームのマスタリングガイドを読んでもいいし,あるいはテーブルトークRPGになれた人にDMを担当してもらってもいい。あなたが初心者であるなら,とくに後者がベストだろう。
古参冒険者のための小咄(1)
あるグループがD&D第5版をプレイした。
アドベンチャーは,旧新和版D&D エキスパート・セット付属の「恐怖の島」の続編にあたる「Savage Tide」。もともとは第3版向けに作られたものだが,それを第5版用にコンバートしたアドベンチャーだった。
冒険者達は伝説の黒真珠を求めて南洋の孤島に挑んだ。シダやソテツの森で,ティラノサウルスを目の当たりにするプレイヤー達。前作のプレイ経験のない者は「恐竜? ファンタジーに恐竜?」と大爆笑。一方,プレイ経験のある者は,「また恐竜か!」と呆れつつ,しかし旧エキスパート・セットから第5版に至るまで,キャラクター側も強化されていることを踏まえ,余裕の構えだった。
そして,旧版にない強力な尻尾攻撃が彼らを襲った。
遊ぶための準備
では,いよいよゲームを遊ぶための準備に移ろう。まず,以下のものを準備する必要がある。
DM1人と3〜5人のプレイヤー
人がいなくては始まらない。頑張って集めよう。上記の人数が集まれる部屋と,大きめのテーブル
案外,日本ではこれが一番大変かもしれない。ゲーム中は思いのほか騒がしくなるものなので,周囲の環境にも気をつけておきたい。筆記用具(人数分)
鉛筆やシャープペンシルなど,「書いた後で消せるもの」がよい。ダイス(さいころ)
4面,6面,8面,10面,12面,20面のダイスが各1つ以上必要になる。ネット通販が発達した現在なら,入手自体はそう難しくないはずだ(昔はここでよくつまづいた)。理想を言うなら,各人が20面体を2つ,4面体を1つ,「メインで使う武器のダメージに対応したダイス」を用意していると流れがいい。なお次善の策としては,スマホやタブレットPCなどにダイスアプリを入れて使う手もある。App StoreやGoogle Playで検索すれば見つかるはずだ。
プレイヤー用ベーシック・ルールを印刷したもの
ルールは事前に読み込んでおくべきだが,プレイ中のあんちょことして,印刷したベーシック・ルールを1部は用意しておきたい。もちろん,PDFをタブレットPCなどに表示させて使っても構わない。「あのルールってどこにあったっけ」というときなどに,検索機能はやはり便利だ。アドベンチャー(DM用)
さて,問題はアドベンチャー(シナリオ)だ。第5版は,現在のところ日本での商業展開が行われていないので,既製のアドベンチャーを入手するのが難しいのだ。もちろん手慣れたDMであるなら,自作してしまえばいいのだが,初めてプレイするゲームでいきなりオリジナルというのも,なかなかにハードルが高い。そこで,ごく短いものではあるが,4Gamerオリジナルのアドベンチャーを用意してみた。この記事の2ページ目に掲載しているので,ぜひ活用してもらいたい。
これからダンジョン・マスターを担当する人以外は,このアドベンチャーを読むべきではない――それはプレイする楽しみを大きく損なうことになる。
D&D第5版ベーシック・ルール対応アドベンチャー
「君知るや南の国」
ここまで揃えば,あとはほんの少しの想像力で足りる。めくるめく冒険の旅を楽しんでもらえれば幸いだ。
もうちょっと遊びたい人のために
さて,第1回の冒険を終えたあとは,どうすればいいだろうか。アドベンチャーの最後に記した展開案に従って,オリジナルのアドベンチャーに発展してもらえたらベストだが,もう少し既製品で肩慣らししたい人もいるだろう。ここでは,現在手に入るそのほかのアドベンチャーについて,少し紹介しておこう。
■「クリスタル・シャードの影」「殺戮のバルダーズ・ゲート」
ホビージャパンから2014年に発売された第4版用アドベンチャー「クリスタル・シャードの影」「殺戮のバルダーズ・ゲート」(共に5800円/税別)は,第5版にも対応している。書籍に記載されているモンスターデータは第4版のもののみだが,その多くは日本語版ベーシック・セットにも収録されているので,そこだけ読み替えればいい(英語限定だが,差し替え用データも本家公式サイトで公開されている)。
……問題はこれらの書籍を今から手に入れるのが困難なことだが,幸いにもその導入部分が,ホビージャパンの公式サイトでPDFとして公開されている。まずはここから挑戦してみよう。
古参冒険者のための小咄(2)
とあるグループは,「クリスタル・シャードの影」を第5版で遊ぶことにした。
あるドワーフの集落が,族長の後継者争いで割れているという。集落を乗っ取らんとする勢力が偽の後継者を立て,正統な後継者を脅かしているのだ。状況はかなり混迷しており,問題を解決するためには,どちらか一方を叩き斬るくらいしかなさそうである(実際,第4版で遊んだ場合は得てしてそのような展開になる)。
しかし,PCの一人である“民衆英雄”という背景を持つドワーフは,「自分の知名度」と「一騎打ちを断ると人望を失う」というドワーフ社会の掟を利用し,偽の後継者を推す勢力の親玉に一騎打ちを申し込む展開を思いつく。そして,これに勝利することで事態を収め,問題を解決してしまったのである。
このように,第5版では説得や取引,恫喝といった交渉要素が「背景とインスピレーション」という仕組みでルール化され,プレイの自由度を広げることに成功している。冒険における「探索」「交渉」「戦闘」の要素をバランス良く取り入れた,第5版ならではのファインプレイといえるだろう。
■旧版用アドベンチャーを使う
旧版用の日本語版アドベンチャーを,第5版用にコンバートして遊ぶのも一つの方法だろう。マップと話のワク組みとNPCの立ち位置だけをそのまま使い,データだけを置き換えるのだ。これらはホビージャパンの公式サイトでも無料のものが幾つか公開されている(第3版用 / 第4版用)ので,比較的入手しやすいはずだ。
ただし,コンバートには一手間が必要になる。以下に指針を示しておくので,参考にして欲しい。
ベーシック・ルールに同名モンスターが載っている場合
単にデータを置き換えれば良い。D&Dでは,版が改まっても同名モンスターの強さは「そこまで」変らない。時間があるなら「戦闘遭遇の作成」を参考に,テストプレイしておくとベストだ。ベーシック・ルールにいないモンスターの場合
ばっさり「似たモンスター」や「そこにいそうな別のモンスター」に置き換えてしまおう(クラグ・キャット→ウルフなど)。また低レベル帯なら,3版/3.5版データをそのまま使っても,そこまで大きな問題はない。魔法のアイテム
「単に+がつくだけのアイテム」は無視するといい。ストーリーに絡む主要アイテムだけを渡すのが,第5版流だ。古参冒険者のための小咄(3)
あるプレイグループが,第3.5版用アドベンチャーを第5版で遊んでみた。
しかるにプレイヤーの一人は,そのアドベンチャーをかつてプレイしたことがあり,そのことを唐突に思い出した。休憩時間に,彼はそれをDMに相談し,DMは慌てて敵の正体とラストバトルの内容を変更する羽目に。結果,戦闘はいささかハードな展開になったが,PC達はなんとか勝利を収めることができた。
後にDMは思った。
「待てよ,単にあいつだけ口止めしときゃよかったんじゃねえの?」
……無料アドベンチャーを遊ぶときにはありがちな話である。
■英語版にチャレンジする
もしDMであるあなたが英語に堪能であれば,選択肢は大きく広がる。Wizards of the Coastのお膝元である北米では,充実したアドベンチャーが数多く発売されており,プレイヤー用の日本語ベーシック・ルールと組み合わせることで,真に充実した無限の冒険が楽しめるだろう。多少の誤訳は気にせず,チャレンジしてみる価値はあるはずだ。
楽しく,長く遊べるテーブルトークRPG
なお,日本国内における第5版以降の商業展開は,現時点で目処が立っていない状況にある。だが,ホビージャパンからWizards of the Coastへ継続的な働きかけが続いており,日本におけるD&Dの人気が高まれば,状況が変わる可能性は十分にある。
この年末年始,ぜひ友人知人を誘って,めくるめくD&Dの世界に飛び込んでみてほしい。そうすれば,きっと新たな展開も見えてくるはずだ。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」公式サイト
- 関連タイトル:
ダンジョンズ&ドラゴンズ 第5版
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