テストレポート
「Xbox One」分解レポート。これはシンプルさと合理性をとことん突き詰めたハードだ
Xbox Oneのハードウェア仕様が明らかになったのは2013年のことなので(関連記事),「どんなハードウェア仕様のゲーム機か」は記憶の彼方という人も多いのではなかろうか。
というわけで本稿では,その復習も兼ねて,Xbox Oneのハードウェアを概観し,さらに分解も行ってみたいと思う。すでに注文済みの人も,しばらく様子見という人も,ぜひチェックしてもらえれば幸いだ。
※注意
ゲーム機の分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
見た目は薄型PC風で涼しそうな第3世代Xbox
光沢部はホコリがけっこう目立つ
さて,本稿のために用意したのは,北米版の「Xbox One+Kinect」だ。先だって日本マイクロソフトでXbox事業を担当する泉水 敬執行役 インタラクティブ・エンターテイメント・ ビジネス ゼネラルマネージャーから,
- 電波法などの適合周りを除いて,日本版Xbox Oneのハードウェアは北米版と基本的に同じ
- Xbox Oneは発売後にも細かくリビジョンチェンジが入っている
という情報が得られたので,北米市場で2013年11月22日に発売された「Day One Edition」ではなく,より新しい個体であると思われる通常版の製品ボックスを入手した次第である。
ただ,実機を目の前にすると,「デカい」という印象はない。むしろ,小型のデスクトップPCといった印象で,違和感がないというより,既視感のあるデザインといった感じだ。
本体重量は公称で3.2kgとされている。電源はACアダプター式なので,大きさの割には軽い。
インタフェースは,左側面側にUSB(Type A)×1が用意される以外は,すべて本体背面側に並ぶ。もともと,北米市場などにおいて,テレビやチューナーなどとの連携が想定されていた経緯もあり,HDMI(Type A)入力や,各社のチューナーユニットを操作するためのIR出力といった端子が用意されているのが,PS4との大きな違いということになるだろう。
いま紹介した写真でも分かるのだが,Xbox Oneは全体の半分くらいが吸排気用のスリットになっている。最も分かりやすいのは天板部で,正面向かって右半分は全面的に吸排気用スリットだ(※下の写真だと左が正面側なので,下半分がスリットとなる)。PS4はエアフローを整流し,効率よく冷却できるような設計になっているが(関連記事),Xbox Oneは筐体表面の相当な部分を開口部にすることで,“涼しい筐体”を実現しているといったところだろうか。
ちょっと気になったのは,スリット以外の外装。スリット以外の本体表面は光沢処理がなされているのが,これがやや安っぽく,しかもとにかく汚れやすいのだ。静電気によって埃が付着しやすいうえ,ちょっと触っただけでその跡が残る,といった具合なので,気になる人は,保護フィルムなりなんなりを事前に用意しておいたほうがいいかもしれない。
ゲームパッドは細かくいろいろと刷新
新型Kinectはその存在感が圧倒的
そのデザインは「Xbox 360 Wireless Controller」を踏襲していることが一目で分かるが,実際,ぱっと握ったときの印象は,ほぼ変わらないと言っていい。単三乾電池2本込みの実測重量はXbox One Wireless Controllerが277.5g,Xbox 360 Wireless Controllerが264gと,けっこうな違いがあるのだが,これも体感レベルでは(少なくとも個人的には)ほとんど同じだった。
ただ,操作感自体は,ちょっとこねくり回しただけでも変化があると分かる。とくに顕著なのは,アナログスティックの滑り止めが強化され,滑りにくくなったところだ。本稿の執筆にあたってゲームをプレイしたわけではないので,プレイ感にどれくらいの影響があるかはなんとも言えないが,プラス方向にかなり変わるのではないか。
D-Pad(十字キー)が,Xbox 360 Wireless Controllerの“皿”のような操作感のものから,他社のゲームパッドと近い,“十字キーを操作している感”が得られるものに変わったのもポイントだろう。
見た目も指先で触れた感じも,アナログスティックはかなり変わった |
D-Padの操作感も,見た目どおりな感じで変更が入った |
ショルダーボタンは,よくいえば「しっかりした」,悪く言えば「固くなった」。アナログトリガーも微妙に操作感が変わり,握り込むように操作しやすくなった雰囲気はあるが,ここはゲームで実際にアナログ入力をしてみないと,具体的にどうよくなったかは語れそうにない。
新型Kinectのサイズは実測約250(W)
新型Kinectは,検出できる物体の深度や視野角,検出精度などが大幅に向上している。その処理をXbox One本体側へ“丸投げ”するとCPUリソース的に負担が増すため,新型Kinect内蔵のプロセッサで,ある程度のプリプロセッシングを行ったうえで,Xbox One本体へデータを送るような仕様になっているのだと思われる。結果として,ここまで大仰なものになったというわけだ。
合理性を徹底的に追求した
Xbox Oneの内部設計
Xbox One本体の外装には,ビスがまったくないのだが,それもそのはず,外装パーツはツメを使った填め込み式になっており,本体向かって左のパネルを(やはりツメを外して)取り払い,そのうえで外周のツメを全部外すと,ぱかっと取れる仕掛けになっていた。
実のところ,最難関はここだと言っていいほど,外装を外す難度は高い(というか面倒くさい)。ともあれ,すべてのツメを外すと,上面カバーを本体から分離できるようになる。
この状態で分かるのは,Xbox Oneは,本体内部の全体が金属シールドで覆われていることだ。Xbox Oneは金属ケースの表面にプラスチックの飾り板をくっつけたような構造になっているとさえ言えるだろう。この金属シールドこそが本当の筐体という感じがある。
モジュールの分解は行っていないが,基板にMarvell Technology Groupの「M」ロゴが印刷されており,Microsoftの社名入りシールもあるところを見ると,Marvell Technology GroupがMicrosoftから委託を受けて製造したXbox One専用のユニットだろう。Wi-FiとBluetoothに対応するものだと思われる。
そして,このモジュールの下にあるものも含め,計8本のビスを金属シールド上面から外すと,金属シールド自体の天板が取れてくる。
ちなみにビスは非常に長く,金属シールドを貫通して,プラスチックの底面カバーを共締めするようになっていた。
金属シールドの中は比較的余裕があり,そこに,大型のアクティブ空冷クーラーと,2.5インチHDD,BDドライブが置かれている。2基のドライブはプラスチック製の台座に取り付けられたうえで,台座ごと先ほどの長ビスで共締めされているため,この時点でドライブは台座ごと取り出し可能だ。非常に合理的な設計だといえる。
入手したXbox Oneに搭載されていたHDDはSeagate Technology(旧Samsung Electronics)製のMomentus ST500LM012だった |
BDドライブは専用設計品と思われる |
もちろん,HDDのように代替が効くパーツの場合,すべてのロットに同一のドライブが使われている保証はない。ただ,「容量500GBの2.5インチHDD」として,Momentus ST500LM012がゲーム機メーカーの第1選択肢になっている可能性は考えられるかなとは思う。
一方のBDドライブはPhilips & Lite-On Digital Solutions製。ごく普通のSerial ATA接続型……と思いきや,一般的なPC用の5インチモデルと,いわゆるスリムドライブの中間的な厚みになっていた。Xbox One専用のユニットと推測できそうだ。
以上,Xbox Oneの筐体設計は,合理性へのあくなき追求を強く感じるものになっている。これに尽きると言ってもいいくらいだ。
PS4のように小型化を目指したりすることなく,「内部のスペースを十分に確保して空気の流量を確保しつつ,部品点数を抑えて組み立て工数を減らすのだ」という思想に基づいて設計されているのだろう。
まるでPCのような
Xbox Oneのマザーボード
取り出したマザーボードに固定されているクーラーを,マザーボード背面側の金具を外して取ると,マザーボードを仔細に観察できるようになる。
というわけで,下に示した2枚の写真がマザーボードの表面と背面である。
サイズはMicroATXフォームファクタより一回り大きいといったところ。背面側にはチップ抵抗やコンデンサ,ダイオードといった部品しかなく,AMD製のカスタムAPUを始めとした主要LSIはすべて表面に集約されている。
「Microsoft」の名前と,Xbox Oneのロゴが刻印されたAPUでは,「X887732-001」「DG3001FEG84HR」という,型番らしき文字列も確認できる。このプロセッサには,「Jaguar」(ジャガーもしくはジャギュア)マイクロアーキテクチャに基づくCPUコアが8基と,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャに基づく768基のシェーダプロセッサ,そしてXbox Oneにおける最大の特徴ともいえる容量32MBのeSRAMが集積されている。
ダイサイズは実測で約17.4
ちなみにXbox OneのAPUはTSMCの28nmプロセス技術を用いて製造されていると言われている。それが正しいとすれば,推定で38億〜40億トランジスタというところだろうか。かなり規模の大きなLSIだ。
ちなみにファンはヒートシンクの形状にぴったり合うように設計されている。ファンのサイズはおおむね120mm角相当だが,羽の直径は113mmあったので,120mm角ファンと比べて若干大きめとは言えるかもしれない。
マザーボードに戻って,APUの周囲に16枚並んでいるのは,メインメモリとグラフィックスメモリを兼ねるDDR3 SDRAMとなる。分解した個体ではSamsung Electronicsの「K4W4G1646Q-HC1A」という型番のチップになっていた。データシートが見つからなかったので詳細は不明だが,4Gという文字が入っているので,おそらくは1枚あたり4Gbitのチップだろう。それが16枚でトータル8GBという計算だ。
サウスブリッジと推定されるチップ |
SK Hynixのロゴが印刷されたチップ |
ちなみに,PS4ではHDDのインタフェースとしてUSB接続のSerial ATAコントローラが採用されていたのだが,Xbox Oneのマザーボード上にそれらしいチップはなく,サウスブリッジの近くにSerial ATAコネクタが2つ実装されているので,Serial ATAコントローラはサウスブリッジに統合されていると思われる。ストレージ周りの性能は,PS4よりもXbox Oneのほうが上かもしれない。
サウスブリッジのすぐそばにはSK Hynixのロゴが印刷されたチップがある。型番が非常に読みにくので間違えているかもしれないが,「H26MA42003GMR」ではないかと思われ,そうであれば,容量8GBのフラッシュメモリだ。おそらくはブートROMなどのファームウェアを格納しているのだろう。
お馴染みの蟹マーク入りチップがXbox Oneのマザーボード上に搭載されている |
Nuvoton Technology製のSoCがサブ基板に載っていた |
マザーボード上のめぼしいチップは以上だが,実は,前段で一言触れただけのサブ基板に,割と重要なチップが載っていた。Nuvoton Technologyのビデオ&音声処理専用SoC(System-on-a-Chip)「ISD9160」である。
ISD9160は,ARMの「Cortex-M0」を中核とするプロセッサの一種だ。実のところ,Microsoftは以前から,Xbox Oneで音声処理をAPUからサブプロセッサにオフロードしていることを明らかにしていた。なので,このISD9160は音声操作周りの機能を実現するために用意されているのではないかと思う。ISD9160はビデオプロセッシングも行えるが,Microsoftによる言及や,新型Kinectが大仰な作りであることからするに,ISD9160でサウンド関連を処理し,新型Kinectで映像関係を処理しているのではないかと筆者は推測する。
シンプルで合理的
そしてPS4よりもPCに近いXbox One
分解しながら何度か繰り返してきたとおり,筐体の設計はシンプルかつ合理的。言い換えればコストを抑えた設計といえる。日本では本日発売なので,将来を云々するのは早すぎかもしれないが,PS4と比べると,競争力のある価格を設定しやすい設計ともいえるだろう。もちろん「豪華な仕様の新型Kinectを除けば」という条件付きではあるが。
いずれにしても,日本でもようやく新世代機が出揃ったわけで,ゲーマーとしては,とにかくハードを買いたくなるゲームタイトルが次々と登場することを期待したいところだ。
MicrosoftのXbox One製品情報ページ
4Gamer.netのXbox One特設ページ
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