[韓国ゲーム事情特別編]「Shine Online」制作者インタビュー
Kimの韓国最新PCゲーム事情 特別編
ポスト「マビノギ」を狙う「Shine Online」:プロデューサーインタビュー(2005/2/14)
Text by Kim Dong Wook特派員
以前[韓国ゲーム事情#296]でもお伝えした,ポスト「マビノギ」の地位を狙う新作MMORPG「Shine Online」。トゥーンレンダリングをうまく使うことで,少年漫画風のグラフィックス表現を実現し,韓国で期待が日増しに高まる本作について,開発会社ARAGON Networksの副社長兼総合プロデューサーYang, Soon Young氏にインタビューした。カートゥーン"シェーディング"でなくカートゥーン"マッピング"を使ったグラフィックス,独自の"師弟"システムなどの中身を語っていただこう。
<Yang, Soon Young氏>(37歳)
1994年 SKC映像事業チーム 1997年 SKCゲーム事業チーム 1999年 Wizard Soft設立,開発総括部長 アメリカのバークレー大学インターナショナルディプロマ課程留学 2004年 Aragon Networks社副社長兼開発総括プロデューサー
開発作品: RTS「ジュラシック原始伝」などPCパッケージゲーム多数 MMORPG「Forgotten Saga2 Online」 ゲームポータル「Cengame」
■少年コミック風のカートゥーンマッピング方式を採用
4gamer: こんにちは。韓国ではサービス中/開発中のMMORPGが100タイトルを超えるほどに,競争が熾烈な状況だと思います。もちろんShine Onlineは独特の要素を多く備えていると思いますが,それにしても今MMORPGを開発するのは非常に厳しい挑戦ではないでしょうか?
Yang, Soon Young氏(以下Yang氏): もちろんそうです。それで私たちは,既存のMMORPGに似たものははじめから作る理由がないと考えました。8頭身の3D MMORPG,いわばリネージュIIみたいなグラフィックスのスタイルは徹底的に排除したのです。Shine Onlineが採用したトゥーンレンダリングは,「マビノギ」や「Seal Online」などですでに活用されていますが,厳密に見ればそれらとは違ったものになります。
4gamer: そうですね。少年漫画風のグラフィックスを採用したことがキーのようですが。
Yang氏: はい,キャラクターと背景は既存のオンラインゲームと異なる少年コミック風のデザインにし,オンラインゲームプレイヤーに加えて,同じ年齢層のコミック読者達に魅力を感じてもらうことを目指しています。 既存の"可愛いらしい"MMORPG「ラグナロクオンライン」やSeal OnlineのSDキャラクターと差別化するポイントとして,6頭身のキャラクターデザインを採用しました。背景描写でリアルさを高めつつ,派手な魔法効果,スキル,戦闘アクションに加えて,MMORPGでとくに重要な"打撃感"を最大化するように作りました。
4gamer: 最近はやっているカートゥーンレンダリング技法を採用したのも,そうした工夫の一環ですか?
Yang氏: 見た目は普通のカートゥーンレンダリングみたいですが,実際には少々異なる方式を使っています。一般に3DゲームではPCの性能に合わせて描画クォリティが変わるリアルタイムレンダリング方式をとっており,性能の低いPCにも対応するためにローポリゴンのモデリングが使われるのですが,このローポリゴンのモデルにカートゥーン"シェーディング"を適用したのでは,最終的な画質が大きく低下してしまいます。 そこで我々はカートゥーン"マッピング"と呼ばれる新しい方式を使いました。これは,シェーディング工程をごく普通に行ったうえで,テクスチャマッピングでカートゥーンらしさを出すというものです。カートゥーンらしい配色,カートゥーンらしいタッチ,そのほかカートゥーンらしい演出をテクスチャマッピングで実現するのです。 シェーディング工程にはごく普通の手法を使っているため,ローポリゴン+カートゥーンシェーディング方式と違って画質の低下を引き起こすことなく,カートゥーンレンダリングの長所,すなわち柔らかくて暖かいイメージが得られます。
敵キャラクター。デザイン,輪郭線の処理方法ともに少年漫画風だ
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■マビノギとラグナロクのターゲットを狙う
4Gamer: 確かに背景によってその人物の感じが大きく変わるように見えます。それにしても,グラフィックス開発の人材が豪華ですね。
Yang氏: 我々が以前に開発したMMORPG「Forgotten Saga2 Online」のグラフィックスプロデューサを含めて,有名アニメーション会社出身の人材や,"ジュセンサヨ"など韓国PCパッケージゲームのグラフィックス開発を12年間行ってきた人材などが参加しています。また,プログラムパートにもPC用パッケージソフトとして有名なRTS「ジュラシック原始伝」などを開発した,旧TRIC社のメンバー達が参加しています。
4Gamer: なるほど,噂どおり業界のベテランが集まって作っていますね。私もジュラシック原始伝は非常に楽しくプレイした記憶がありますが,韓国製RTSとしては名作ですね。
Yang氏: 人材面ではどの会社にも引けは取らないと自負しています。しかし,もっと重要なのは我々が,MMORPG「Forgotten Saga2 Online」の,開発からサービス提供まですべての流れを経験してきた点です。その貴重な経験を通じて,プレイヤー達が望むこと,コンテンツのアップデートタイミング,課金の仕組みなどについてしっかりと学び,そのノウハウがShine Onlineに生かされているというわけです。
4Gamer: なるほど,MMORPG作品の開発/運営ノウハウが一番の強みなわけですね。でもなんとなく,もうすぐ日本でもβサービスが開始される「マビノギ」に似ている感じもするのですが。
Yang氏: 我々の判断として,Shine Onlineはマビノギとラグナロクオンラインの中間くらいに位置していると思います。グラフィックスの雰囲気はマビノギに近いが,ファンタジー的なコンセプトと戦闘の楽しさではラグナロクオンラインのほうに近いです。もちろん,特定のゲームを模倣するとか,そういったことではないのですが(笑)。
4Gamer: いずれにせよ日本のゲーマーに好評を博する要素が多そうですね。せっかくですのでShine Onlineについて,もう少し詳しいお話をぜひ。
Yang氏: はい。Shine Onlineは私たちが住んでいる星,それ自体が一つの生命体であるという"ガイア理論"を根底に据えて,アイシャ(ISYA)大陸および周辺の島々,また別の大陸を舞台にストーリーが展開されます。アイシャ大陸はフュージョンファンタジー設定を持った世界になっており,よくある中世ファンタジーの固定観念に囚われず,モンスターと時代がかったシチュエーションが共存する独特の場所です。 ゲーム全体では11の都市と二つの"Special Place",そして都市ごとに1〜2か所のダンジョンが存在します。アイシャという独特のファンタジー世界を背景に,迫力溢れる戦闘,派手なグラフィックス,ゲーマーにとって馴染みやすい雰囲気のキャラクター,奇想天外な遊び要素がいっぱいで,幻想的な冒険が楽しめる作品になります。
4Gamer: クラス設定や転職システムも存在しますか?
Yang氏: はい。主人公格のキャラクターは,少年コミック風のタッチをフルに生かした姿で,プレイヤーの皆さんにも気に入ってもらえるかと。「ドラゴンボール」や「ワンピース」のように,年齢層と関係なく人気のある漫画の主人公に似た姿なので,漫画が好きな老若男女に広くアピールできるでしょう。 種族としてはヒューマン,エルフ,ダークエルフが用意され,それぞれに戦士系,ヒーラー系,遠距離攻撃系,魔術師系という4種類のクラスがあって,各クラスとも3段階の転職が可能です。
■Shine Onlineのクラスと転職 戦士系:fighter → Warrior → berserker ヒーラー系:Cleric → Paladin → Holy Knight 遠距離攻撃系:Archer → Scout → Ranger 魔術師系:Mage → Enchanter → Wizard
こちらはプレイヤーキャラクター。同様に目鼻立ちが大きく,太い輪郭線でコミック調の雰囲気を出している
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■ミニハウス,ギルドストーンなど独特のシステム満載
4Gamer: なるほど……ところでShine Onlineには,ほかにも多様なシステムが用意されていると聞きました。とくに以前「こちら」の記事で紹介したミニハウスシステムのことがかなり気になるのですが。
Yang氏: はい,韓国での反響は相当なものでしょう。今後世界的なトレンドになる可能性も高いと予測して構想しました。ミニハウスは,すべてのプレイヤーに提供される自分だけの特別な空間で,綺麗に装飾してほかのプレイヤーに自慢できますし,プレイヤー同士の交流の舞台となることで,コミュニティの形成促進効果も期待できます。 基本コンセプトは「Mini Hompy」に似ていますが, MMORPGで展開されるそれはWeb上のMini Hompyとまったく印象が異なり,もっと発展した感じになると思います。 まださまざまなアイデアが加えられている最中ですから具体的には言えませんが,プレイヤーのミニハウスはゲームフィールド内に存在し,スキンの変更で外見を変えることができます。例えば,初めはテントの形態だが,しまいにはお城になるなんてこともあるかもしれませんね (笑)。
4Gamer: おお,素晴らしいですね。ところでミニハウスには,プレイヤーのサイバー空間での家という以外に,活用方法は用意されていないのでしょうか?
Yang氏: もちろん多様な活用手段が検討されていますが,今日のところは"個人商店"の機能もあるというところまでにさせてください。これ以上は守秘義務の関係でちょっと無理かも……。
4Gamer: では,ぜひ次回にでも聞かせてください。話題は変わりますが,Shine Onlineにはコミュニティ活性化のために,ギルドにまつわる珍しいシステムがあるとも聞いたのですが。 Yang氏: ええ,ほかのMMORPGでよくあるギルドシステムから脱皮し,「ギルドストーン」というアイテムを利用してギルドが成長していくシステムを採用しました。プレイヤーキャラクターの成長とは別に,自分が属するギルドの成長を通じて,帰属意識が高まるわけです。そして,ギルド員同士でより親密なコミュニケーションが生じるようにします。
4Gamer: もう少し具体的な説明を伺えますか。
Yang氏: ギルドマスターがギルドを結成すると,ギルドだけの固有空間が生成されます。そしてギルドメンバー達がゲームマネーを集めてギルドストーンというアイテムを購入,それをギルド専用の村に用意されているスロットに装備します。その後ギルドメンバー達がモンスターを狩るたびに,手に入れた経験値のうち一定の割合(例えば2〜5%)がギルドストーンに集まり,これでギルドのレベルが上がるようになります。ギルドストーンのレベルが上がれば,ギルドメンバー全員のHPが5%上昇するといったメリットが生じるわけです。
4Gamer: 確かにそうしたシステムがあれば,ギルドにより強い帰属意識が持てるようになるかもしれませんね。主立ったシステムとしてはそのほかにどんなものがありますか?
Yang氏: 大きなものでいうと,既存プレイヤーと新規プレイヤーの協力を通じて,ゲームプレイを長続きさせる「師弟システム」というのがあります。師匠1人当たり3〜5人の弟子を持つことができ,弟子が獲得した経験値のうち一定量を師匠が受け取れるようになります。 既存のプレイヤーが新しいプレイヤーをゲームに引き入れると同時に,新規プレイヤー達は既存プレイヤー達の積極的なサポートを受けて,ゲームをより持続的にプレイするようになるのです。師匠側は弟子から経験値がもらえるわけですから,新規プレイヤー達の面倒をよく見るようになるでしょう。
4Gamer: 新規プレイヤーのための配慮のように見えて,既存プレイヤーにも大きなメリットを与える,よく考えられたシステムですね。ほかにはどんなことを考えられていますか?
Yang氏: そのほかにも「武器タイトル」システム,「アリーナ」システム,都市別クエストシステム,エンブレムコレクションシステムなどさまざまなものを予定しているのですが,一度に全部公開してしまうとかえって興がそがれると思いますので,今日のところはここまでにさせていただければと。4Gamerさんには引き続き情報を提供させていただきますので……。
4Gamer: どれもかなり気になるところですが……分かりました(笑)。今後ともよろしくお願いします。では最後に,4Gamerの読者のに一言お願いします。
Yang氏: キャラクター育成の楽しさ,自分だけのアイテムを収集する楽しさ,友達と付き合う楽しさ,この3種類の楽しさを実現するのがShine Onlineの目標です。一人でプレイしても面白いが,友達と一緒にプレイすればもっと楽しいオンラインゲームを目指しています。企画の初期段階から日本市場を非常に重視していますので,日本のゲーマー達にも必ずや満足してもらえると思います。
4Gamer: 本日はありがとうございました。
Yang氏: こちらこそありがとうございました。これからもShine Onlineをよろしくお願いします。
MMORPGに詳しい人からみると,ギルドアイテムや家のルールなどは,あくまで"韓国での"新しい仕掛けであるに留まるかもしれないが,ほかのプレイヤーの獲得経験値の一部を即物的に自分の経験値収入にできてしまう"師弟"システムは確かに大胆なものであり,思惑どおり広汎に機能すれば,なかなかに興味深いプレイの枠組みとなるだろう。 グラフィックスのタッチはプレイヤーの好みが強く出る部分なので,一概にはいえないものの,画面から判断する限り,確かにマビノギよりさらにはっきりしたコミック調の演出が適用されている様子。背景描写と合わせたゲーム全体の雰囲気が,日本を含め漫画的表現に親和性を持つ市場でどのように評価されるか,興味の尽きないところだ。 ともあれ,新機軸となるシステムについても,まだまだ詳細が語られていないShine Online,今後明らかになるであろう情報にもぜひ注目していきたい。
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