NVIDIA,ミドルレンジ向けGeForce 8「GeForce 8600/8500」を発表
GeForce 8600 GTSのイメージ
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日本時間2007年4月17日,NVIDIAは「GeForce 8」ファミリー初のミドルレンジ向けGPU(グラフィックスチップ),「GeForce 8600」「GeForce 8500」を発表した。発表時点では,上位モデルから順に「GeForce 8600 GTS」「GeForce 8600 GT」「GeForce 8500 GT」が用意されている。 DirectX 10をハードウェアレベルでサポートするGPUとしては,世界初のミドルレンジ向けとなる3モデルだけに,搭載グラフィックスカードの価格は1万5000円〜3万円のレンジに収まる見込みで,GeForce 8ファミリー普及の起爆剤となり得る存在だ。
■基本的なスペックはGeForce 8800のそれを踏襲 ■80nm製造プロセス,メモリバスは128bit
NVIDIAが公開したGeForce 8ファミリーのキーイメージ。左の顔はテクノロジーデモ「Adrianne」から
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GeForce 8600/8500の基本的なスペックは,ハイエンド向けGPUである「GeForce 8800」と同じ。そのため詳細はGeForce 8800について解説した記事を参照してほしいが,ポイントを簡単に説明しておきたい。
まず,DirectX 10世代のプログラマブルシェーダ4.0(シェーダモデル4.0,SM4.0)には完全対応。GeForce 8800で採用された統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャをGeForce 8600/8500も踏襲している。GeForce FX/6/7世代のように,決まった数のピクセルシェーダ(Pixel Shader)/頂点シェーダ(Vertex Shader)ユニットを搭載するのではなく,両ユニットとしても利用できる汎用的なストリーミングプロセッサ(Streaming Processor)を搭載しているのだ。
GeForce 8600 GTカードによるSLI構成のイメージ
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デュアルグラフィックスカードソリューション「NVIDIA SLI」には3モデルとも対応。 低描画負荷でより高いサンプル数のアンチエイリアシングを実現するCSAA(Coverage Sampled Antialiasing,効果はぜひレビュー記事で確認を)や,「GeForce 7」で採用していたものから改善を果たし,より低いCPU負荷で高解像度ビデオの再生を可能にするという新「PureVideo HD」にも,GeForce 8800から変わらず対応している。
GeForce 8600/8500固有の特徴としては,製造プロセスルールが80nmで,GeForce 8800の90nmよりも微細化されている点が挙げられる。ミドルレンジ向けグラフィックスカードで求められる消費電力の低減に一役買っているといえそうだ。 一方,ミドルレンジ向けらしい制限もある。最大のものはグラフィックスメモリのバス幅で,GeForce 8600/8500のそれは128bit。GeForce 8800シリーズでは最低でも320bit(最高384bit)なので,差は顕著だ。描画負荷が高くなると,上位モデルにはまったく歯が立たない場面も出てくるだろう。
なお,4月17日時点におけるGeForce 8ファミリーのスペックは以下の表にまとめたので,参考にしてほしい。
※GeForce 8600 GTS/GT,GeForce 8500 GTは予想実売価格,GeForce 8800 GTX/GTSは実勢価格(いずれも2007年4月17日現在)
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概要をまとめたところで,ここからは発表された3モデルのGPUについて,個別に説明してみよう。
●GeForce 8600 GTS
GeForce 8600 GTSリファレンスカードのイメージ
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ミドルレンジ向けGeForce 8としては,発表時点で最上位モデル。開発コードネーム「G84-400」と呼ばれていたGPUで,「GeForce 7950 GT」や「GeForce 7900 GS」といった,“ミドルハイ”クラスのGeForce 7を置き換えるモデルとして,当初は3万円前後の価格帯で搭載カードが流通する見込みだ。 ストリーミングプロセッサの数は32基で,96基の「GeForce 8800 GTS」からすると3分の1にまで削減されているものの,一方でコアクロックは675MHz。これは,「GeForce 8800 GTX」のリファレンスよりも100MHz高い値だ。さらに,グラフィックスメモリクロックもGeForce 8ファミリー最速の2GHz相当(実クロック1GHz)を実現している。
グラフィックスメモリチップはGDDR3が採用され,リファレンスでは容量256MBまでの対応。デュアルリンクDVIにより,最大2560×1600ドットの高解像度出力をサポートする。高解像度ビデオ用の著作権保護機構「HDCP」にも標準対応だ。
搭載グラフィックスカードはPCI Express用の6ピン補助電源が必要とされるものの,カード自体の消費電力は71Wで,少なくともGeForce 8800シリーズと比べると大幅に下がっている。NVIDIAは,シングルグラフィックス構成なら350W,NVIDIA SLI構成時には450W以上の定格出力を持つ電源ユニットを推奨しているので,参考になるだろう。
別の角度から撮影したGeForce 8600 GTSリファレンスカードのイメージ
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●GeForce 8600 GT
GeForce 8600 GTリファレンスカードのイメージ
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GeForce 8600 GTSの下位に位置づけられるモデルで,開発コードネームは「G84-300」。こちらはコストパフォーマンスのよさで人気となったGeForce 7世代のミドルレンジ向けGPU,「GeForce 7600 GT」の後継製品として,搭載カードは当初,2万円前後で市場に投入される見込みである。 ストリーミングプロセッサ数はGeForce 8600 GTSと同じ32基で,グラフィックスメモリがGDDR3 256MBまでの対応になるのも同じ。HDCPはオプション(=標準では搭載しない)扱いとなるが,カードメーカー側の判断によって対応させることもできる。 最大の違いはコアクロックとメモリクロックがそれぞれ540MHz,1.4GHz相当(実クロック700MHz)に抑えられている点。逆にいうと違いはそれくらいしかないため,メーカーによってはクロックアップモデルが登場してきそうな気配だ。
カードの消費電力は43Wと低く,GeForce 7600 GTのリファレンスカードと同様,PCI Express用補助電源なしで利用できる。NVIDIAが推奨電源ユニットの出力は,シングルカードで300W以上,SLI構成で350W以上とのことだ。
別の角度から撮影したGeForce 8600 GTリファレンスカードのイメージ
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●GeForce 8500 GT
GeForce 8500 GTリファレンスカードのイメージ
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4月17日時点におけるGeForce 8ファミリーのローエンド。開発コードネーム「G86-300」と呼ばれていた製品で,カードの想定売価は1万5000円前後となっている。価格的に「GeForce 7600 GS」を置き換える製品といっていいだろう。
ストリーミングプロセッサ数はGeForce 8600シリーズからさらに半減した16基で,さらにコアクロックは450MHz,メモリクロックは800MHz相当(実クロック400MHz)にそれぞれ下げられており,GeForce 8600とはパフォーマンス的にけっこう差がつきそうな気配だ。 グラフィックスメモリはDDR2のみの対応となり,容量はリファレンスデザインで256/512MBに両対応。GeForce 8600 GTと同様に,PCI Express用補助電源は必要としない。
別の角度から撮影したGeForce 8600 GTリファレンスカードのイメージ。SLIコネクタは用意されないため,NVIDIA SLI動作はドライバでの対応となる
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■搭載カードは明けて18日に発売 ■複数のメーカーから大量ラインナップの予定
DirectX 9&10世代の“上から下まで”すべてをサポートしていることをアピールするスライド(※出典:NVIDIA)
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搭載グラフィックスカードは即日出荷され,早ければ明けて4月18日の朝から全国のPCパーツショップで販売が始まる予定。流通筋の情報によれば,NVIDIA製GPUを扱う主要メーカーのものはかなり早いタイミングで出揃うようだ。また,最初からメーカーレベルでクロックアップ処理されたモデルも登場の見込みとなっている。 DirectX 10時代の,真の幕開けを告げるミドルレンジ向けGPUだけに,注目している読者は多いだろう。今回4GamerではGeForce 8600 GTS登載カードを入手し,レビュー記事を掲載しているので,ぜひそちらもチェックしてほしい。(ライター・宮崎真一)
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