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“ENG刻印なし”ノースブリッジで何が変わったのか? ASUS製「AMD 780G」マザーボードのレビューを掲載
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印刷2008/04/15 22:08

レビュー

AMD 780Gグラフィックス機能統合型チップセットの真価を問う

M3A-H/HDMI

Text by Jo_Kubota

»  ASUSから発売されたATXマザーボード「M3A-H/HDMI」は,「ENG」の刻印を持たない,新しいAMD 780Gチップセットを搭載した製品だ。では,そこにどんな違いがあるのだろうか。そして,いくつか残った疑問は解決するのか? AMD 780Gについて過去2度のテストレポートを行ったJo_Kubota氏が,満を持して搭載製品を評価する。


 今回は,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)が市場投入してきた「AMD 780G」グラフィックス機能統合型チップセット搭載マザーボード「M3A-H/HDMI」(以下,M3A-H)を取り上げたいと思う。AMD 780Gマザーボードは,先に2度掲載したテストレポート(関連記事1関連記事2)で不可解な挙動を見せることがあったが,ASUSの新製品ではどうだろうか? さっそくチェックしてみたいと思う。

M3A-H/HDMI
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected]
実勢価格:1万8000円前後(2008年4月15日現在)
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「RADEON IGP」刻印の新ノースブリッジを搭載

電源周りを中心に作り込まれた印象を強く受ける


新AMD 780Gノースブリッジ。先のテストレポート×2では「CHIPSET 0752 ENG」だったが,「RADEON IGP 0801」となっている
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 2度のテストレポート後にもAMD 780Gマザーボードは何製品か店頭販売が始まっているが,なぜM3A-Hなのか。その理由は,同製品が“ENG刻印”のないノースブリッジを搭載している点にある。M3A-Hが世界初……かどうかは断言できないが,少なくとも筆者が知る限りは初めてだ。右がその写真だが,刻印は「RADEON IGP」。旧ATI Technologies時代の「Radeon Express」を彷彿(ほうふつ)とさせる表記で,エンジニアリングサンプルらしい気配は完全に払拭されている。この新チップセットがどういう意味を持っているのかについては,後ほど述べたい。

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 さてM3A-Hだが,設計面で注目したいのは,電源フェーズ数が4+1となっていることだ。ASUSによれば,4フェーズがCPUコア,1フェーズがHyperTransportやメモリコントローラといったCPU内部の“ノースブリッジ機能”用に分かれているとのこと。先にテストしたBIOSTAR MICROTECH製品「TA780G M2+」が3フェーズ,GIGABYTE UNITEDが3(もしくは3+1)フェーズなので,一段上の余裕が感じられる。
 外部ディスプレイインタフェースはデジタルYCbCr&RGB(HDMI)およびアナログRGB(D-Sub)の2系統。付属のHDMI−DVI変換アダプタにより,デジタルRGB出力もサポートされる。
 ATXフォームファクタということもあり,拡張スロットもPCI Express 2.0 x16 ×1,PCI Express x1 ×2,PCI×3と,十分な数が用意されているのも好印象だ。

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搭載するサウスブリッジ「SB700」は,先のテストレポートで用いたマザーボードと同じもの(と思われる刻印のチップ)を採用していた
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M3A-HのI/Oインタフェース。DVI出力が標準添付の変換アダプタによるという仕様は,少々好みが分かれるところかもしれない


「パフォーマンスが正しく出るのか」を軸に検証

少々特殊なセットアップに注意


 テストのセットアップに入ろう。今回のポイントは,一にも二にも,新しいAMD 780Gを搭載するM3A-Hが,安定してパフォーマンスを発揮できるかどうかにある。そこで今回は,M3A-Hのベンチマークスコアに不自然な点がないかを中心に,テスト結果を見ていくことにしたい。
 とはいえ,さすがにM3A-Hのスコアだけを載せるというのは不親切なので,今回は

  • RADEON IGP刻印を持つチップセットを搭載したASUS製microATXマザーボード「M3A78-EMH HDMI」量産前サンプルのテスト結果
  • 2008年3月4日のテストレポートで用いた,ENG刻印入りチップセット搭載のGIGABYTE UNITED製マザーボード「GA-MA78GM-S2H」の一部スコア

M3A78-EMH HDMI
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected]
価格:未定(2008年4月15日現在)
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と比較することにした。
 M3A78-EMH HDMI(以下,M3A78)は,同じAMD 780GマザーボードながらM3A-Hと製品名の統一感がないが,製品から受ける印象もかなり異なっている。microATXとATXの違いは置いておくとしても,似ているのはDIMMスロットを4本搭載する点やSerial ATAポートが六つ用意されている点くらい。電源フェーズ数が3である点や,M3A-Hが搭載する外部PLLチップ「9LPRS477BKL」が省略されている点など,M3A-Hと比べると製造コストが抑えられている気配だ。メインメモリとシェアする形のグラフィックスメモリ容量も,M3A-Hが512MB確保できるのに対し,M3A78は256MBまでという制限がある。

いろいろ異なるM3A-H(左列)とM3A78(右列)。1000BASE-T LANコントローラも前者がAtheros Communications(旧Attansic Technology)のL1に対し,後者はRealtek SemiconductorのRTL8111Cだったり,前者が全面的に固体コンデンサを採用しているのに対して後者はそうでないといった違いがある
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 このほか主な違いは表1にまとめたので参考にしてほしい。

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 GA-MA78GM-S2H(以下,MA78GM)については先のテストレポートが詳しいが,こちらもM3A-Hと比べるとシンプルな印象である。
 「一部スコア」としたのは,二つの理由からだ。一つはMA78GMをテストしたときは4Gamerのベンチマークレギュレーション5.1を使っていたが,今回は同5.2となり,すべてのテスト結果を流用できるわけではないため。もう一つはMA78GMのテスト環境がかなり異なるためである。
 今回のテスト環境は表2のとおりだが,MA78GMのテストではHDDが日立グローバルストレージテクノロジーズ製の「Deskstar T7K250」(HDT722516DLA380,160GB)であるほか,OSはSP1未適用の32bit版Windows Vista Ultimate,ドライバはATI Catalyst 8.2系と,大きく異なり,純然たる横並びには適さない。そのため,今回は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)で取得したスコアの一部をあくまで参考値としてピックアップするに留めた次第だ。

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 なお,テストに用いたCPUは表2で示したとおり「Phenom X4 9850 Black Edition/2.5GHz」と「Athlon 64 X2 5000+/2.6GHz」の2製品。動作クロックを揃えるため,前者は倍率変更により2.6GHzで動作させた。以下,順に9850@2.6GHz,5000+と表記する。

 テストに当たって用いた解像度は基本的に800×600/1024×768/1280×1024ドットの3パターン。アンチエイリアシングや異方性フィルタリングを適用しない「標準設定」のみで検証を行う。OSはWindows XPと32bit版Windows Vistaの2種類を用意した。また,レギュレーション5.2の描画設定では負荷が高すぎるという理由から,「Crysis」の描画オプションはすべて「低」とし,さらに1280×1024ドットでのテストを省略する。
 さらに,ローエンド環境もターゲットとなるMMORPGから,「三國志 Online」と「ファイナルファンタジーXI」をピックアップし,両タイトルのベンチマークソフト「三國志 Online ベンチマークソフト」および「Vana’diel Bench 3」(Version 1.00)でもテストを行う。


すこぶる安定した挙動を見せるM3A-H

M3A78はENG刻印ありマザーと似た傾向に


 ベンチマークテスト結果のチェックに入ろう。
 グラフ1は3DMark06の総合スコアだが,9850@2.6GHz搭載時にはM3A-HとM3A78でスコアの違いが生じている。高解像度だと無視できるレベルだが,描画負荷の低い800×600ドットだとWindows XP環境で6%弱。決して無視できない違いだ。
 一方,5000+搭載時――先に述べたとおり,ここではMA78GMに5000+を搭載した状態のスコアを,3月4日の記事から参考までに流用している――だと,3枚のマザーボードでスコアにそう大きな違いは生じていない。

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 9850@2.6GHz搭載時におけるスコアの違いはどこで生じているのか。その疑問に対する回答となりそうなのがグラフ2,3DMark06のCPU Scoreである。というのもM3A78だと,9850@2.6GHzのスコアがまったく伸びていないのだ。
 M3A-HとM3A78のスコアに差が出る要因としては,UMAで確保されるグラフィックスメモリ容量があるため,念のためM3A-HにおいてBIOSからグラフィックスメモリ容量を256MBに設定してみたのだが,そのときのCPU Scoreは3498。「グラフィックスメモリ容量の違いによってスコアは若干下がる」が,2000を割ったりはしないので,グラフィックスメモリ容量が原因という線は消える。

 次に,表2に示していない機材から,「Phenom 9600/2.3GHz」を用意して,M3A-HとM3A78の両方でグラフィックスメモリ容量を256MBに指定してテストを行ってみると,CPU Scoreは順に3096,2950。要するに,M3A78に9850@2.6GHzを組み合わせたときだけおかしなスコアが出るというわけだ。ちなみに,テスト中にASUSのラボから0606β BIOSを入手したので試したが,これでも結果は変わらなかった。

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 グラフ3は3DMark06の「Feature Test」から「Fill Rate」テストの実行結果をまとめたものだ。先のテストレポートでは,5000+とWindows Vista環境の組み合わせにおいて,「Single-Texturing」のスコアが落ち込むという現象が見られたが,M3A78はその問題を踏襲する一方,M3A-HはM3A78よりも60%ほど高いスコアを示している。Windows XP環境でのテスト結果と見比べるに,妥当な結果といえるだろう。ちなみにM3A-HでUMAのグラフィックスメモリ容量を256MBに指定しても,5000+とWindows Vistaのテスト結果は629.8MTexels/s。グラフィックスメモリ容量が原因でスコアが落ち込んでいるわけではないことを確認済みである。

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 同じくFeature Testからグラフ4がピクセルシェーダ,グラフ5が頂点シェーダのテスト結果だが,やはりここでもM3A-HのみがOSを問わず妥当なスコアを出しているのが分かる。つまり,5000+とWindows Vistaの組み合わせでスコアが上がらない問題は複数のマザーボードで起こりえるが,それはチップセットの問題ではない可能性が高いということだ。

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 ここからはM3A-HとM3A78で,実際のゲームにおけるパフォーマンスをチェックする。
 グラフィックスオプションを「低」にした状態におけるCrysisのスコアをまとめたのがグラフ6だ。800×600ドットでゲームになること,そしてWindows XPとWindows Vistaでは前者のほうがフレームレートが高く出ることは,先のテストレポートと変わらない。
 Windows Vista環境の1024×768ドットという,今回のテスト環境中,最も負荷の高い局面において,M3A78と5000+の組み合わせがスコアを落としている点にも注目したい。

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 続いては,Crysisと比べるとかなり描画負荷の低い「Half-Life 2: Episode Two」だが,ここではWindows XPとWindows Vistaでスコアにほとんど差はない(グラフ7)。また,M3A-HとM3A78の差もほとんどないが,厳正を期せば後者のスコアが若干高めだ。
 ゲーム環境として見てみると,描画設定を高めにしてあるレギュレーション5.2準拠で,1024×768ドットまでゲームになるあたり,AMD 780Gのポテンシャルはやはり高い。また,同じ動作クロックに揃えた9850@2.6GHzと5000+を見比べるに,グラフィックスパワーの不足を補う形でのPhenom導入というのは,AMD派にとってかなり理にかなった選択であるといえそうである。

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 RTS「Company of Heroes」のテスト結果がグラフ8だが,低解像度で描画負荷が下がるほど,Windows XPが有利となる。また,M3A-HとM3A78で前者が若干有利か。もっとも「UMA容量の差が出ているかも?」と言えるか言えないか程度の,ごくごく小さな違いだが。

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 グラフ9は,三國志 Online ベンチマークソフトの実行結果だ。先のテストレポートと異なり,Windows Vista環境のスコアが高いが,ATI Catalyst最適化の効果か,SP1の効果か,さすがにこれだけでは断言できない。
 いずれにせよ,Windows Vista環境でM3A78&5000+がスコアを落としている点は注視しておく必要がありそうだ。ゲームプレイを前提に考えると,1000ポイントが快適に遊べるかどうかの基準点なので,標準計測で用いられている1024×768ドット解像度以下なら,AMD 780Gでも多くの局面で快適にプレイできるだろう。

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 パフォーマンス検証の最後はVana’diel Bench 3」の実行結果である(グラフ10)。ここでもWindows Vista環境ではM3A78がスコアを落とす傾向を見せている。

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 せっかくなので,テストレポートに引き続いてワットチェッカーを用いたシステム全体の消費電力チェックを試みた。ここではWindows XPが起動してから30分放置した直後を「アイドル時」,3DMark06を30分間連続実行し,その間で最も消費電力の高かった時点を「3DMark06実行時」,MP3エンコードソフト「午後のこ〜だ」ベースのCPUベンチマークテスト「午後べんち」を30分間連続実行し,その間で最も消費電力の高かった時点を「午後べんち実行時」として,各時点の計測結果をまとめたのがグラフ11だ。

 部品点数や電源周りの回路数から考えて,ATXフォームファクタを採用するM3A-Hのスコアが高めに出るかと思われたが,意外にもM3A78と同じレベルに収まっている。また,5000+が3Dmark06実行時と午後べんち実行時で消費電力が10W程度しか変わらないのに対し,9850@2.6GHzは4スレッドが動作することにより,午後べんち実行時に消費電力がブーストしてしまう。
 まあ,トータルで200W以下なのは確かなので,3D性能を考えれば,許容範囲内といえなくもない。

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いまなお疑問も残るAMD 780Gチップセットだが

M3A-Hの安定感は群を抜いている


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 今回のレビューを進めるに当たって,関係者への取材を進めるうちにはっきりしたことがある。それは「A13とされてきたリビジョン≠今回のRADEON IGP刻印版AMD 780Gノースブリッジ」ということだ。AMD本社に近い筋によれば,(RADEON IGP刻印のAMD 780Gチップセットは)ENG刻印あり版にあった,BIOSレベルで対応できるようなマイナーな問題を潰した,A12量産版とのこと。A13リビジョンは現在のところ,2008年第2四半期中に市場投入予定となっている「Puma」(プーマ,開発コードネーム)用のチップセット――つまり,開発コードネーム「RS780M」のことだ――として開発が進められているとのことだった。先のテストレポートでA13と表記していた部分は,A12量産版とするのが正しかったわけで,この点は訂正させていただきたい。

 もう一つお知らせしておきたいのは,AMDの日本法人である日本AMDの広報担当者に「ENG刻印入りとRADEON IGP刻印の違いは何か?」と問い合わせたところ,以下の回答が返ってきたことである。

「ボリューム生産の完全な立ち上がり直前の製品であるため、ENG刻印があるということになります。ENG刻印があっても、AMDの品質テストや各種検証をすべてクリアした製品と同様の製品です。」「現時点で市場に出ている780Gに関しましては ENG刻印が有る、無しに関わらず、まったく同一製品です。」(※いずれも原文ママ)

M3A-Hにおける「GPU-Z」(Version 0.1.7)実行結果
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 つまり,ENG刻印があろうがなかろうが,まったく同じというのだ。常識的に考えて,刻印の異なるチップが「まったく同一」というのは考えづらいため,先の関係者が指摘するように,量産前版にはBIOSで対応できるレベルの問題があったが,すでにBIOSで対応されたという理解が正しいように思われる。だとすると,日本AMDの森本竜英氏が「ENG刻印版ではAMD OverDriveが正常に動作しない問題がある」という旨を述べていたにもかかわらず,店頭に並んだENG刻印版チップセットを搭載したマザーボードで多くの場合AMD OverDriveが機能したのも納得できそうだ。

 では,なぜ条件によってパフォーマンスが上がらない場合があるのか。これについては,ASUS広報担当者の「M3A78はもともと,ある特定地域に向けて開発を行った製品で,対するM3A-Hは,全世界市場に向けて開発された製品である。製品型番に統一性がないのは開発チームが異なるためだ」という説明がヒントになりそうである。

マザーボード裏面。上がM3A-H,下がM3A78だ
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 海外サイトを中心に,AMD 780Gマザーボードは電源回路の規模次第でTDP 125WのPhenom X4上位モデルをサポートできない可能性が指摘されている。実際,今回のテスト中でも,3フェーズ仕様のmicroATXモデルとなるM3A78にPhenom X4 9850 Black Editionを取り付けると,定格クロック動作であってもかなり大きなコイル鳴きが発生したほか,BIOSからCPU動作倍率を変更すると再起動に失敗することが多々あった(※ASUS広報担当者によれば,コイル鳴きについては認識しており,国内出荷版でこの問題は発生しないよう改善を図っているとのこと)。

 あるASUS関係者は4Gamerに対し「M3A78を日本市場で発売するためには、もう少し製品の完成度を高める時間が欲しい」と漏らしたが,広報担当者のいう「ある特定地域」が中国市場のことを指すのは,AMD 780Gマザーボードが正式発表前に中国市場で出荷されていたことからして,まず間違いない。チップセットの正式発表前に中国市場へ向けて出荷する前提で開発&製造されたAMD 780Gマザーボードは,何らかの事情で日本のPCユーザーが期待する安定度を獲得できていない可能性もありそうだ。
 まあ,いかなる理由/事情があるにせよ,M3A-Hのスコアが極めて妥当なものになっているのは確か。正直なところ,先のテストレポートを経てAMD 780Gマザーボードの不安定さに辟易しつつあったのだが,M3A-Hはそんな思いを払拭してくれた印象で,(自作PCマニアではない)安定した環境を望む自作派PCゲーマーに勧められるAMD 780Gマザーボードがようやく登場したといえる。

 これまで繰り返してきたように,AMD 780Gはグラフィックス機能統合型チップセットの常識を覆すポテンシャルを持つ。より完成度が高められたM3A-Hの登場によって,ローコストな自作PCゲーム環境において,一定の地位を確保するに至るだろうことを歓迎したい。
  • 関連タイトル:

    AMD 7

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