2016年11月1日,AVerMedia Technologies(以下,AVerMedia)は,ゲーマー向けビデオキャプチャデバイスの新製品「
AVT-C878」(Live Gamer Portable 2,海外市場における製品名は「GC510」)を日本市場で11月9日に発売すると発表した。メーカー想定売価は
税込2万5000円前後となっている。
本体背面側のインタフェース。HDMIパススルー出力と入力(Type A),給電およびPCとの通信用となるUSB(Micro-B),microSDカードスロットとなっている
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AVT-C878は,PCレスでも,PCの外付け周辺機器としても使えるキャプチャデバイスとして人気を集める「
AVT-C875」(Live Gamer Portable)の後継という位置づけの製品だ。AVT-C875はHDMI入力した映像を最大1080/30p(1920
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1080ドット,30fps)でキャプチャできる製品だったが,AVT-C878は,PCレスの「単体録画モード」,PCとの
USB 2.0接続時となる「PCモード」のいずれにおいても
1080/60p(1920
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1080ドット,60fps)で録画できるのが最大の特徴である。
また,AVerMediaの従来製品ではサポート外だったiOSデバイスに対応し,iPhoneなどからHDMI入力した映像のキャプチャも可能だ。
単体録画モードのイメージ。AVT-C878にmicroSDカードを差し,別途USB接続で給電を行うと,HDMI接続したデバイスからの映像出力をキャプチャできる
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PCモードのイメージ。USB 2.0接続したPC上でキャプチャもしくは配信を行いつつ,「遅延ゼロ」で外部ディスプレイへ出力できるという
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PCモードの特徴。PC上でゲーム画面を表示するときは0.18秒の遅延が発生するという
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AVerMedia製外付けキャプチャデバイスの上位モデル「GC550」はすでに1080/60pをサポート済みだが,接続インタフェースはUSB 3.0専用で,また,ソフトウェアエンコードを採用する仕様上,CPUも4コア以上のものが必要だった。それに対して今回のACT-C878はUSB 2.0接続でよく,また,ハードウェアエンコーダを搭載するため,ただ録画するだけなら2コア2スレッド仕様のCPUしか要求しない。また,専用ドライバのインストールも不要と,導入のハードルが極めて低く,ここが大きなアピールポイントになっている。
もちろん,付属の専用ソフト「RECentral 3」を使えば,Webカメラの映像などをゲーム画面に重ねるPiP(Picture-in-Picture)を利用したり,ソフトから直接ニコニコ生放送でライブ配信したりといった,従来製品で使えていた機能はそのまま利用可能。さらに,ドライバレスで動作するメリットを活かし,PCやMacと接続すれば,「Open Broadcaster Software」(OBS)などのサードパーティ製ソフトウェアからゲームのライブ配信を行うこともできる。
●AVT-C878の主なスペック
- 動作モード:単体録画,PC
- PC接続インタフェース:USB 2.0(※専用ドライバ不要)
- エンコード方式:ハードウェア
- 最大入力解像度/フレームレート:1080/60p
- 最大録画解像度/フレームレート:1080/60p
- 入力インタフェース:HDMI Type A(ビデオ+サウンド),3極3.5mmミニピン(実況用マイク),4極3.5mmミニピン(ゲーム機側ゲームパッド),microSD
- 出力インタフェース:HDMI Type A(ビデオ+サウンド)
- パススルー:○(※遅延ゼロ)
- 生配信:○(※PCモード時)
- 対応OS:Windows,Mac OS,iOS
- 公称本体サイズ:146.8(W)×57(D)×46.5(H)mm
- 公称本体重量:約185.5g
撮影準備はほぼ手間いらず
まずは,AVT-C878で撮影するときの下準備から確認していこう。製品ボックスの中に入っているのは,本体とHDMIケーブル(Type A−Type A),USB 2.0ケーブル(micro-B−Type-A),4極3.5mmミニピンケーブルとなっており,あとはmicroSDカードを揃えれば,HDMI出力に対応したゲーム機での録画を単体録画モードで始められる。
ただし,iOS用ゲームの録画を行うには,別の機材と設定が必要だ。今回はiPhoneでの撮影を想定して,Appleから発売されている「Lightning - Digital AVアダプタ(A1438)」と,RECentral 3導入済みのPCも別途用意した。
AVT-C878は,AVT-C875と比べるとかなりのモデルチェンジになっている。持ち運びという点だけ見れば,AVT-C875の形状のほうが適している気もする
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というのも,AVT-C878は,工場出荷状態でHDCPが有効になっていて,そのままだとiPhoneからのHDMI出力をキャプチャできないからだ。HDCPを無効化するには,PC(=Windows機)からRECentral 3を起動のうえ,左ペインの上にある「設定」から「キャプチャーデバイス」を選択のうえ,「一般」以下にある「HDCP検出機能」を「オフ」にする必要がある。また,接続のシンプルさからして,単体録画モードで使えそうなのだが,単体録画モードではHDCPを無効化できないため,iOSデバイスとの接続にあたってはPCモードに切り換える必要があった。
このふた手間をかけないと,いつまで経っても録画は行えないので,iOSデバイスからゲーム映像をキャプチャしたいと思っているなら注意しておきたい。
RECentral 3からHDCPを無効化
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AVT-C878とPCをUSB接続するときには,AVT-C878がPCモードに切り替わっているか確認しておこう
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あとは,USB給電環境を用意してやればOKだ。今回はいわゆるモバイルバッテリーでAVT-C878への給電を行うことにした。
AVT-C878へモバイルバッテリーから給電を行っている例。ちなみに電源は5V 1A仕様
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筆者は普段,MacBookProのQuickTimePlayerでスマートフォンゲームの録画を行っているが,AVT-C878であればiPhoneとモバイルバッテリーをつなげるだけで録画できる。もちろん,電源供給元はPCなどでもいい。重量や専有面積を考慮すると,AVT-C878のほうが持ち運びに適しているのは一目瞭然だ
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録画の開始/停止は,デバイスの中央にある渦巻きマークを押すだけという,非常に分かりやすい形となっている。
渦巻きマークの色によって,AVT-C878の状態を確認できる。青色は録画可能,赤色は録画不可,赤色の点減は録画中といった具合だ
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AVT-C878は「Pokémon GO」に最適
ゲーム実況の入門としてもオススメ
では,実際にスマートフォンゲームを録画した印象を紹介しよう。
下にムービーを並べてみたが,AVT-C878とMacBookProで録画したものを比較してみると,AVT-C878のほうが若干白みがかっている点を除き,違いはほとんどない。
外出先で横画面のものを撮影することはあまりないとは思うが,念のため,横画面のタイトルを録画したものも掲載しておこう。
参考までにPokémon GOのスクリーンショット(左)と,AVT-C878で録画したムービーから切り出したショット。こんな感じで黒枠が生じてしまう。RECentral 3側にスケーリングオプションがあれば……と思ったのだが,調べた限りでは見つからなかった
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ただし,気になる点もある。今回はiPhone6 Plusを使って録画したのだが,記録されたゲーム画面を確認してみると,縦/横画面どちらの場合も,
上下左右に黒枠が生じてしまうのだ。いわゆるゲーム実況系の動画を作るとき,編集で一手間必要となってしまうのは,マイナスポイントといえる。
また,リュックなどにAVT-C878を入れた状態で録画したみたところ,microSDカードが(スロットに蓋がないため)何かの拍子に飛び出てしまったり,[録画開始/停止]ボタンを誤って押してしまったりしないか,若干心配になった。テスト中にそういう問題は生じなかったので,取り越し苦労かもしれないが。
なお,ゲーム映像の録画中に画面をモニタリングできないのは怖いが,ヘッドフォンを差して音をモニターすれば,録画できているかどうかは確認できる
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「Pokémon GO」(
iOS /
Android)の爆発的人気などで,屋外での収録を行うゲーム実況者も増えてきており,需要が高そうなAVT-C878。個人的には,取材先などで手軽にゲーム映像を収録できるようになるというのは非常に嬉しい。
正直,実勢価格2万5000円前後というのはさすがに高いと思うが,ゲーム録画&実況用の入門機としてアリな仕様を持ってはいるので,惹かれるところがあるなら,購入を検討してみてはどうだろうか。
Android端末での撮影も試みたが,AVT-C878の対応端末外ということもあり,録画することはできなかった。リテラシーの高い読者には言うまでもありませんが,出先で手軽に録画できたとしても,ゲームプレイは立ち止まってしましょう。歩きスマホはダメ絶対!
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